高速道のSA・PA、思わず目を見張る最新進化 「やむなく立ち寄る施設」ではなくなった

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刈谷ハイウェイオアシスは地域のランドマークに(筆者撮影)

また、高速道路の利用者だけでなく、一般道の利用者も施設に入れるよう、両者の接点に「ハイウェイオアシス」の名で登場した大型の休憩・レジャー施設もすっかり定着。その代表例、成功例として知られる伊勢湾岸道の刈谷ハイウェイオアシスは、年間利用者数900万人あまりと、高速道路の休憩施設の枠には収まらない地域のランドマークとして根付いている。立派な観光施設、集客施設となったのである。

グルメの殿堂、そして総合テーマパークへ

前回紹介した新名神高速道路の新規開通区間(川西IC~神戸ジャンクション)には、道路の開通そのものと同じくらい話題となり、関西の情報番組でも繰り返し取り上げられた最新鋭のサービスエリアである宝塚北SA(上り下りが一つに集約されたスタイル)がある。

私もこの大型連休初日の朝に立ち寄ってみたが、自動販売機から照明、商品のラインアップはもちろんのこと、タカラジェンヌの衣装の展示まである「ヅカ」感満載の外観や内装もさることながら、何よりも驚いたのはトイレである。

宝塚北SAのシャワー付き洗面室(筆者撮影)

2か所あるうちのメインの男性トイレは、なんと小便器18台に対して個室が20室もあり、しかも6室は乳児連れで利用できるイクメン対応。しかも小便器はすべて「手洗器一体型小便器」、つまり用を終えてそのまま手が洗える、NEXCO西日本とTOTOが共同開発した仕様に揃えられている。洗面台が少なくて済む分、個室の洗面台も2部屋あって、シャワーで頭を洗えるようになっているのは、夜を徹して走るドライバーには重宝されるに違いない。

シャワー付き洗面室のピクトグラム(筆者撮影)

私はもちろん入れないが、女性トイレでは男性トイレの2倍以上ある広々とした空間にシャンデリアが輝き、パウダールームや着替えの部屋まで設けて、百貨店や劇場のトイレを上回るゴージャス感を醸し出しているとのこと。

そのほかにも、宝塚歌劇のブルーレイディスクが販売されていたり、イベント広場では月に一度、宝塚OGによるレビューショーが上演されたりするなど、まるで“第二” (東京にも宝塚劇場はあるので、実際には“第三”?)宝塚劇場にいるかのような錯覚を覚える施設であった。

ちなみにこの日は一般道からの利用者も多く、SAの近くに設けられた臨時駐車場とSAの間にシャトルバスが運行されていた。高速道路の休憩施設に向かうのにシャトルバスを利用するというケースは、ほとんど例がないのでは?というほどの人気ぶりである。

今後のSA・PAの役割

また、設備や商品ではなくソフト面を見ても、例えばNEXCO東日本と関東経済産業局は、関東・信州に広がる絹産業の遺産とSA・PAを包括したスタンプラリーを一昨年から共同で実施しており、高速道路の利用及び立ち寄りの促進と地味な産業遺産への見学客誘致を合体させたユニークな施策として注目されるなど、ここ数年、SA・PAのサービス戦略の進化は著しい。

鉄道、特にJRが進める改札内のショッピングエリア充実戦略、いわゆる“エキナカ”の進化もあって、交通手段全般がサービス合戦の様相を呈していることによる活性化が高速道路にも波及していると考えてよいだろう。

現在、世界各国では自動運転の実用化に向けた開発競争が熾烈を極めているが、自動運転が実現すると、運転で疲れるということがなくなるので、休憩施設の必要性は低下する懸念がある一方、運転そのものを楽しむことができなくなると、SA・PAに立ち寄ることは、高速道路最大の、というより唯一の楽しみ(今でもそういう人は多いと思われるが)になる可能性もある。

平成の後半に一気に進化したSA・PAは新元号を迎える2019年以降、さらにどんな新機軸を打ち出してドライバーや同乗者、あるいはバスの乗客を集めるのか、まだまだ進化が続きそうである。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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