アマゾン「当日配達ドライバー」の過酷な実態 記者が潜入!疲弊する都内の下請け配達現場

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荷物が増える中、配達効率を高めるようにとのプレッシャーは強い。同行したドライバーが勤める会社の社長によると、アマゾンはDPに対し、1時間平均9個の配達完了を求めている。配達拠点ごとに毎日報告させ、平均を下回り続けると、エリアごとDPを差し替えるケースもある。

DPの報酬体系を通しての圧力も強い。前出の社長によれば、DPは新規の協力会社に、最初の3カ月間は配達個数にかかわらず車両1台当たり1日2万数千円を支払う。その後は配達完了の荷物1個につき200円程度を支払う体系に変わる。効率が悪いドライバーは稼げなくなり、自然と淘汰されていく構図だ。

アマゾンを頂点とするピラミッド構造

DPが協力会社を使うのには、自社ドライバーを抱えずに固定費を抑え、繁閑の差に柔軟に対応したいという事情がある。宅配大手と違い、DPには集荷や代金引き換えの業務がないため、アマゾン側は配達効率の向上を期待した。だが、協力会社への依存度の高いことが配達効率を下げるという皮肉な現象も起きている。「配達で遅れが生じても、協力会社同士が連携することは難しい」(前出の社長)。

今回潜入したDPの拠点には協力会社の下請け会社も入っていた。アマゾンを頂点とする物流のピラミッド構造が生じている。宅配大手も下請けや孫請けに依存しており、構造は同じだ。人手不足の物流業界では大手が社員の待遇改善を進めるが、末端には十分に行き届いていない。アマゾンは配送の一部をヤマトからDPにシフトしたが、問題の構図は何ら変わらない。自社配送網の拡大を阻む大きなリスクといえそうだ。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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