価格差2倍も、欧州の鉄道「現金乗車」なぜ高い 対応が面倒な観光客への「割り増し料金」か
英語が上手でない訪英客も多い。また、英語を母国語とするアメリカ人は米本土で電車そのものに乗った経験がほとんどない人も多く、公共交通機関の利用そのものに慣れてない。その点においては日本人よりかえって厄介な存在ともいえる。
駅員と訪英客(そのほとんどが初回訪問者だろう)のやり取りを聞いていると、前述の「高い片道乗車券の話」に始まり、駅員による「オイスターカードを買うと便利だ」という説明が続き、「いや、2日しかいないからそれは無駄」と訪英客が反論。「じゃあ、1日乗車券は?」と話が展開し、12.90ポンドと聞いた訪英客が「そんなに高いのか?」といぶかりながらも納得しないままチケットを買う、といった感じだ。おそらく、このようなやり取りが連日繰り返されているのだろう。
駅員に「こんな説明を日々繰り返していて大変ですね?」と聞くと、意外な答えが返ってきた。
「結局のところ、観光客は高めの切符を買うわけなんで、まぁ、それはそれでわれわれとしてはありがたいわけで……。案内にこんなに手間をかけて話をしているのだから、その分観光客は余分に払ってもいいんじゃない?」
これは「手間賃の分を運賃に上乗せしている」という意味にもとれる。公式にはそうしたことはどこにも書かれていないが、係員配置の人件費、発券機能のついた販売機の設置コストなどを考慮すると、「差額」をつけるという発想は理解できなくもない。実際にここ1年以内に、オイスターへのチャージ専用機がずいぶんと増えた。しかもこのマシンは現金ではチャージできず、クレジットカードなどで支払う仕組みとなっている。
もっとも、観光客は各国にある英国政府観光局などを通じて、ビジター用オイスターを事前入手することができる。これにはデポジットがそもそも入っていない上、いわゆるICカード料金でバスや地下鉄に乗れ、さらに自由にチャージも払い戻しも可能となっている。「あらかじめ買っておくという手間」を訪英客側がしっかり負えば、その分割安に旅ができるという、ある意味フェアなオプションも存在する。つまり、あらかじめ買っておくという手間を惜しまなければ、その分割安に旅ができるという、ある意味フェアなオプションも存在する
ほかの都市でも「観光客向け手間賃」
ロンドンのように慣れない観光客への「事実上の案内コスト」を切符に転嫁しているような例がほかにもないか、と欧州各国の様子を見回してみた。
最もわかりやすい「割増」をしている都市として、ノルウェーの首都・オスロのケースがある。同市のトラムやバスではICカード使用や自動販売機で切符を買った場合、1乗車35ノルウェークローネ(約485円)だが、それらの運転手から乗車時に現金を払って乗ろうとするとこれよりも20クローネ割高となる。事情がわかる人なら事前にどこかで切符を買うなり、ICカードを持つなりするだろうが、現地に疎い観光客などはいきなりトラムに乗り込んで、あれやこれや尋ねながらおカネを払って乗ることもあるだろう。これも、乗客対応による手間賃をしっかりおカネでいただこう、という発想ともとれる。
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