価格差2倍も、欧州の鉄道「現金乗車」なぜ高い 対応が面倒な観光客への「割り増し料金」か
地下鉄を運営するロンドン交通局は「オイスターカード利用に誘導し、駅で切符を買う人を減らしたい」という方針のもと、現金での片道乗車券購入額をオイスターカードでの引き落とし額の2倍以上に設定するという手段を講じている。たとえば、都心部(ゾーン1)内の利用について、オイスター利用なら2.40ポンドなのに対し、紙の切符を買って乗ると4.90ポンドとなる。
「そんなにオイスターに誘導しているんだったら、観光客はそれを買って乗ればいいじゃないか?」と賢明な読者はそう考えるかもしれない。ところがロンドン交通局はさらに巧妙な仕掛けを用意している。オイスターは購入時に5ポンドのデポジット(保証金)が必要なのだが、買ってから48時間以上経たないとそのデポは回収できない仕組みとなっている。つまり、数日滞在のみの観光客には使いにくい格好になっているというわけだ。
じゃあ、と次に考えられる手は1日フリー乗車券のたぐいの購入だろうか。しかしロンドン交通局はこれにも「いやらしい」仕掛けを付けている。
フリー乗車券は範囲が広すぎる
観光客の需要からすれば、都心の「ゾーン1」の範囲内で大抵のスポットに行くことができる。しかし、実際に売られている1日フリー乗車券に当たる「トラベルカード」は、都心から15~20キロも離れたヒースロー空港までも含めた広範囲に有効な1日乗車券しか設定がない。値段は12.90ポンド。短期滞在の観光客はいや応なしにそれを押し付けられる。東京にたとえると「山手線内だけあれば十分なのに、武蔵野線と南武線で囲む範囲までも含んだ切符を買わされる」といった状況だ。
一方でオイスターカード利用者には優遇措置がある。「1日の支払い限度額」が設定されており、利用したゾーンごとに支払うべき最大額が決まっている。ちなみにゾーン1内なら6.80ポンドが上限で、それ以上はいくら乗ってもカード残額は引き落とされない仕組みだ。
サークル線をほぼ一回りして来た男性の話を聞いた筆者は、観光客が集まりそうな駅に行って、観光客のフリをして「紙の乗車券がなぜこんなに高いのか?」と、駅員に尋ねてみた。
行ってみた場所はサークル線など6路線が乗り入れるキングス・クロス・セント・パンクラス駅だ。隣接するセント・パンクラス駅は欧州大陸と英国を結ぶ国際列車「ユーロスター」の発着駅であり、地下鉄の切符売り場は旅行客らでつねに混み合っている。
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