日野が親会社のライバル「VW」と手を組む事情 商用車業界再編でいすゞは「ひとりぼっち」に
「親会社同士が競争しているのはわかっている。しかしそれ以上に今は仲間が必要だ」日野自動車の下義生社長は会見で力強く語った。
世界の商用車大手2社のビッグな提携話が飛び込んできた。4月12日、トヨタ自動車の子会社であるトラックメーカーの日野自動車は、独フォルクスワーゲン(VW)トラック&バスと、包括提携に向けての協議を開始すると発表した。VWといえば、乗用車ではトヨタ最大のライバルである。よりによって、なぜこの組み合わせになったのか。
EVトラックや自動運転の開発加速へ
組み合わせを読み解く上で、2社の提携が何に重きを置いているかを見る必要があるだろう。現時点で具体的な協業内容は決まっていないが、最優先事項は、新技術の共同開発にある。トラックの電気自動車(EV)化や自動運転システム、コネクティビティなど新領域の技術開発を加速する。また、調達や販売・サービスでの提携によるコスト低減も視野に入れる。
日野自動車は日本2位、世界11位のトラック・バスメーカー。インドネシアをはじめとするアジアで中・大型トラックを強みとしてきた。トヨタから50.1%の出資をうけており、「トヨエース」「ランドクルーザー」などの生産も行っている。
もともと、日野は2003年から2011年まで、後にVW傘下に入るスカニアと提携関係にあった。日野の国内工場で「日野スカニア」を製造し、スカニアは韓国の販売網を通じて、日野の中型トラックを販売していた。だが、事業規模が小さく、提携は解消していた。
一方のVWは、2011年に独マン、2014年にスウェーデンのスカニアを子会社化するなど、商用車部門の拡大路線をとってきた。2015年には商用車部門をVWトラック&バスとして分社化。2017年には、米国のトラックメーカー・ナビスターにも16.6%の出資を行っている。商用車販売台数では現在世界5位。2017年の世界販売は前年比12%の成長を遂げて20万台を突破したが、47万台を売った首位の独ダイムラーには大きく水を開けられている。電動化や自動運転といった先進技術の領域でも、ダイムラーに先行を許す。
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