日野が親会社のライバル「VW」と手を組む事情 商用車業界再編でいすゞは「ひとりぼっち」に
VWトラック&バスのレンシュラーCEOは、「我々は商用車市場でのチャンピオンを目指す。規模ではなく、付加価値においてだ」と語った。同社は、2016年からクラウドをベースとした輸送データ管理のためのプラットフォームを構築し、顧客の利便性を高めることに注力している。
日野の下社長は、「日野の強みは、販売・サプライヤー・メーカーが一丸となって提供するトータルサポートにある」と自負する。実際に、日野のサービスや車両などに関する日本での顧客満足度は、日野がトラックメーカーの中で1位となっている(2018年JDパワー調べ)。付加価値を高めるために、日野の高評価なトータルサポートを武器とする狙いもあるのだろう。
国内トラックメーカーの提携関係を見ると、三菱ふそうとダイムラー、ボルボ・トラックとUDトラックス(旧日産ディーゼル工業)が先行しており、その結果は目に見える形で出ている。三菱ふそうはダイムラーの電池を使い、EVトラックをいち早く投入。UDトラックスのある社員は「ボルボの完全子会社になってから、さまざまな技術が入ってきた」と述べている。
いすゞの反応に注目が集まる
取り残されたのはいすゞだ。トヨタから6%の出資があり、国内ではマツダやUDトラックスなどへOEM(相手先ブランドによる生産)供給で提携している。米ゼネラル・モーターズ(GM)とは、2006年に提携を縮小し、小型・中型トラックの小規模なOEM供給を続ける。だが、海外の商用車メーカーとは、新技術の開発など戦略的な提携関係は有していない。VWトラック&バス側からすると、トヨタの子会社よりも、出資比率の低いいすゞとの協業の方が手を出しやすかったに違いない。今回の提携は、日野から熱烈なラブコールがあったということだろう。これを受けていすゞがどのような反応をするかも見逃せない。
変革期真っ直中の商用車業界にあって、親会社同士がライバルという異例の提携へ歩を進める日野。下社長は「トヨタ傘下であることは、世界最高峰のサプライヤーの共有なども含め、われわれの強みだ。関係が変わることはない」と断言した上で、「乗用車メーカーのトヨタには開発できない技術やサービスを、いち早く取り入れるためには、商用車メーカー同士の提携が必要」とも語った。新たな強みを得て、日野は躍進できるか。
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