日野が親会社のライバル「VW」と手を組む事情 商用車業界再編でいすゞは「ひとりぼっち」に

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三菱ふそうが世界で初めて量産可能なEVトラックとして開発した「eCanter」。三菱ふそうが属するダイムラーグループから調達したリチウムイオン電池を搭載し、1充電あたりの航続距離は約100キロメートル(撮影:尾形文繁) 

日野も電動化の技術開発では出遅れている。ダイムラー傘下の三菱ふそうトラック・バスが「eCanter(キャンター)」で世界初のEVトラック量産化に成功。いすゞも、小型の「エルフEV」を開発し、2018年にモニターでの市場投入を予定するなど、ライバル日系メーカーが活発な動きを見せる。こうした状況を看過できないでいたのが、2017年6月に16年ぶりの生え抜き社長として就任した下社長だ。

下社長は就任当初から、先進技術での外部提携には関心を示していた。「スカニアと組んでいた頃、提携の内容以上に、外からの視点から学べることが多かった。グループに固執していては新たな動きを見過ごす危険もある」就任から2カ月後の2017年8月の東洋経済のインタビューでもこのように答えていた。

このころから水面下では両社の話し合いが進められていたという。「2カ月に1度のペースで話をしていた。決まってからはスピーディに提携話が進んだ」。VWトラック&バスのアンドレアス・レンシュラーCEOはそう明かす。

課題が山積する商用車業界

2社とも先進技術の開発強化に迫られていたとはいえ、日野はなぜあえて親会社のライバルを提携先に選んだのだろうか。そこには日野の業界全体に対する危機感が表れている。

2018年1月、国土交通省と経済産業省は国内トラックメーカー4社のトラックを用いて、隊列走行の実証実験を行った。各社のトラックには4社が共同開発した通信システムが搭載されている(編集部撮影)

トラックやバスを使う物流業界では、ドライバーの高齢化・人手不足や地方での交通インフラ衰退など、課題が山積している。それらは、商用車業界の課題でもある。解決に向け、世界の商用車メーカーは国や地方自治体の力を借りながら、協業を進めている。日本でも、今年1月に自動運転技術によるトラック隊列走行の実証実験が高速道路で行われた。この技術の開発は日野が音頭を取っていて、ライバルであるいすゞとの提携も今年3月に発表している。

「VWトラック&バスとの提携話は、トヨタからも、ぜひ進めてくださいと言われている」と語った下社長。生え抜き社長だからこそ、日野や業界の将来を考えてできた決断だろう。「あらゆる可能性を検討した」と、ほかの商用車メーカーとの話し合いも進めていたこともほのめかした。しかし、今回VWトラック&バスと組むことになったのは、会社として求めている姿が同じだったからだと言う。キーワードは”付加価値の提供”だろう。

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