欧州の「フリーゲージ」はなぜ成功しているか 日本のFGTは技術的難易度が高すぎる

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イタリア・ミラノ中央駅に停車するスペインのタルゴ型車両。標準軌の高速新線がフランスとの国境に接したため、タルゴ型の活躍の場はスペイン国内が中心となったが、かつては写真のようにイタリアまで乗り入れていた(筆者撮影)

日本では一向に実用化のメドが立たない軌間可変車両だが、スペインでは「タルゴ」と呼ばれる客車によって何十年も前から実現している。欧州ではほかにも異なる方式の軌間可変車両が開発されており、今回MOBへ導入される車両はスペインの技術とは異なるものだ。日本と欧州の軌間可変車両にはどのような違いがあるのだろうか。

欧州で問題なく実用化されている理由の一つとして、そのほとんどが動力装置を持たない客車である点が挙げられる。日本のFGTは、各台車にモーターなどの駆動装置を搭載する電車方式の車両のため、モーターやギアなどを可変装置の中に組み込まなければならず、台車そのものが複雑な構造となる。各部の耐久性にも問題が生じてくることは想像に難くない。

また、装置が複雑になれば重量も増加し、路盤が弱い日本の在来線で運行した場合、インフラ側のメンテナンス費用にも影響が及ぶおそれがある。車両側、地上側双方に未解決の問題がある状態では、早期の営業運転実現は難しい。

日本に比べれば開発は容易

一方、欧州で採用されている軌間可変技術は、スペインの一部の車両を除いて動力装置を持たない客車に採用されており、構造を複雑にする動力装置を搭載しない分、日本のFGTに比べれば開発は難しくないといえる。

スペインでは動力装置を持った軌間可変車両もあるが、同国の場合は標準軌と、より線路幅の広い広軌(1668mm)との変換であるため、装置そのものの搭載スペースを十分確保することができる。日本や今回のスイス・MOBのように、標準軌と狭軌に対応させる場合はスペースに限りがあるため、設計は容易ではない。駆動装置を搭載する電車方式ならなおさらだ。

欧州の鉄道と日本の鉄道は、同じ鉄道ではあっても車両・インフラともに規格が異なるため、単純に比較することはできない。軌間可変車両も同様だ。欧州では一見簡単に成功しているようにも見えるが、日本のFGTは新幹線での高速運転を実現しながら在来線、それも路盤の弱いローカル区間へ直通運転させるという、現状では限りなく困難に近い高度な技術が求められており、それが実現の難しさに結び付いているのである。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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