欧州の「フリーゲージ」はなぜ成功しているか 日本のFGTは技術的難易度が高すぎる

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美しい大自然の中を行くMOBの列車。有名な「氷河急行」などと同様にその車窓風景は乗客を魅了するが、乗り換えの不便さにより敬遠されているのか知名度はいま一つだ(筆者撮影)

この乗り換えが不便とみなされ、敬遠されているのか、スイス旅行の代名詞のようにも扱われる観光列車「氷河急行」と比較すると、ゴールデンパス・パノラミックはいまいち知名度が上がらない。MOBにとってツヴァイジンメンから先、リゾート地として人気が高いインターラーケンまでゴールデンパス・パノラミックの直通運転を実現させることは、いわば悲願でもあった。

MOBは過去10年以上にわたり、この直通運転に関してさまざまな検討を重ねてきた。標準軌の線路にもう1本の線路を敷いて、車輪を変えなくても直通運転できる「3線軌条」案も検討されたが、乗り入れ先のBLSの協力が不可欠なのと、複雑な線路構造でメンテナンスコストがかさむことなどから実現しなかった。今回、軌間可変装置の技術的なメドが立ったことで、ようやく実現する運びとなった。

2020年末には営業運転

軌間可変装置を作動させるための地上設備が建設されるツヴァイジンメン駅に停車中の列車。現在は乗客全員が乗り換えを余儀なくされている(筆者撮影)

軌間可変装置を作動させるための地上設備は、現在ツヴァイジンメン駅構内に建設中で、2018年8月頃には完成する予定だ。当初計画では2019年12月の冬ダイヤ改正から営業運転を始めたいとしていたが、計画の遅れから2020年12月へずれ込むことになるとアナウンスされている。なお、軌間可変装置を搭載するのは客車だけで、機関車はMOB、およびBLSがそれぞれの軌間のものを用意し、ツヴァイジンメンで軌間変更と同時に、機関車の交代も行う。

軌間可変装置付きの車両は、日本でもフリーゲージトレイン(FGT)として開発が進められてきた。だが、開発が思うように進んでいないことに加え、車両維持費が通常車両よりかなり高額となるため、長崎新幹線への導入を予定していたJR九州は運営が困難であると表明している。

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