安倍首相、「外交で挽回」とは考えが甘すぎる 「日米」、「日ロ」首脳会談に「日朝」も狙うが
首相にとって、今回の外交攻勢の第一歩となるのが日米首脳会談だ。昨年2月の訪米時と同様に、トランプ大統領の別荘であるフロリダ州の「マールアラーゴ」での会談となり、3日間で2回の首脳会談と3度目のゴルフ対決が予定されているという。
北朝鮮危機打開のための歴史的米朝首脳会談が「5月中に開催」とされるだけに、日本側は「北の非核化」に加えて「拉致問題解決」を大統領に働きかける考えだ。対する米側は、このほど大統領が決定した鉄鋼・アルミ輸入制限措置に伴う日本への追加関税適用などの日米貿易交渉を絡めて、首相と政治的取引をする姿勢をにじませている。
日米両首脳はこれまで、「ドナルド・シンゾー」と呼び合う親密な関係を維持してきたが、大統領は今後の日米貿易交渉については「(安倍首相らの)笑顔を見ることは少ないだろう」とツイートするなどトランプ流ディール(取引)でけん制しており、表向きは仲のよさをアピールできても、現実的には両首脳の蜜月関係にひびが入る可能性も少なくない。このため、今回ばかりは重要課題での「完全な一致」などは期待できないのが実情だ。
そもそも、平昌五輪への選手団派遣表明から始まった"金正恩劇場"とも呼ばれる北朝鮮の外交攻勢は、各国関係者の度肝を抜く金委員長の電撃訪中による中朝首脳会談開催で、国際社会に衝撃を与えた。4月27日の開催が決まった金委員長と文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との南北首脳会談と、その先のトランプ大統領との米朝首脳会談への地ならしであることは明らかだが、問題は、金委員長の訪中が米韓両国には事前に伝わっていたのに、日本にとっては「寝耳に水」(自民幹部)だったことだ。
置き去りの首相、「中国から説明受けたい」
3月27日の佐川氏証人喚問の翌日の28日に、中国が26日の首脳会談開催を録画も含めて公表したが、首相は国会答弁で、事前連絡もなかったという「外交的失態」を、事実上認めざるを得なかった。金委員長訪中を匂わす"お召列車"の中国入りの動画や写真が、インターネットに次々投稿されている中での失態は、「日本が北朝鮮問題で置き去りにされている」(自民幹部)との厳しい現実を国民の前に露わにした。
画像で見る限り、夫人同伴の歓迎行事で満面の笑みを浮かべて握手を繰り返すなど、中朝首脳は「中朝同盟関係」を世界にアピールした。トランプ大統領も会談直後の29日、「金正恩が私と会うのを楽しみに待っているとのメッセージを受け取った」とツイッターに書き込んだ。にもかかわらず首相が「中国からしっかりと説明を受けたい」などと国会で答弁している姿は、国民から「日本外交は大丈夫なのか」との声が出るのも当然だ。
だからこそ首相は、「トランプ大統領の最も信頼する相談相手」(外務省幹部)として、日米首脳会談で直談判する機会を求めたわけだ。ただ、「いったんは決まった」(首相周辺)とされる4月2日の首脳会談開催が、「米側の都合」で半月も先延ばしとなった経緯からも、「日米会談が首相の思惑通りの展開となるかは疑問」(自民幹部)との声が広がる。
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