「働き方改革」は保育とセットで考えるべきだ 待機児童問題で経済界ができることとは?

拡大
縮小

保育制度が整っている先進国の取り組みを見ていきましょう。たとえば、子どもが保育を受ける権利を保障しているノルウェーでは、1歳から5歳の子どもの9割が保育園入園を希望し、全入できています。

ただし、保育園の開所時間は、午前7時ごろから午後5時ごろまでの10時間が一般的。2011年の調査では、週当たりの平均在園時間は35時間で、実際の利用時間も短いことがわかります。

北欧のほかの国でも、早朝に開園して午後5時、6時ごろに閉園するというパターンが多く、保護者が子どもを迎える時間帯は午後4時ごろが多いといいます。これらの国では、親たちは短時間勤務制度や、フレックスタイムをよく利用しています。

フランスは、日本と同じように保育園の待機児童が多い国ですが、保育ママ(母親アシスタント)などの多様な保育制度が利用できるため、日本ほど待機児童問題が深刻になっていないと言われます。

ただし、これら制度もおおむね、延長保育を含めて遅くとも夕方6時半ごろまで。保育ママについては、利用者との個別の交渉で保育時間が決まります。

日本でも2010年から自治体の保育ママ制度に国が補助金を出すようになり、2015年からの子ども・子育て支援新制度では家庭的保育(認可事業)に進化させています。

しかし、前出の『100都市保育力充実度チェック』の100市区調査では、新制度前の2014年に1262カ所だった保育ママ事業が、2017年には1101カ所(家庭的保育移行事業と従来の保育ママ事業の合計)に減っています。

新制度の「標準保育時間」認定の最大利用時間が週6日・11時間とされたことや、給食提供(猶予期間あり)を求められたことがネガティブに働いた可能性があります。

保育士が担当する園児数が多すぎる

今年3月、横浜市の認可保育園が保育士不足のために閉園するというニュースが流れ、衝撃が走りました。

保育士不足の根本には、待遇の問題があることが明らかですが、仕事の負担の大きさも課題になっています。解決策として業務改善ばかりが言われますが、そもそも保育士配置基準において、保育士1人が担当する子どもの数が多すぎることが問題です。

次ページ自分の子どものお迎えに間に合わない保育士
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT