「働き方改革」は保育とセットで考えるべきだ 待機児童問題で経済界ができることとは?

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前述したヨーロッパの国々と比べても、日本の1歳以上児の保育士配置基準は低すぎます。保育事業者団体は配置基準を上げることを国に要請し続けていますが、なかなか実現せず、幼児教育の無償化が優先されてしまいました。

さて、前述の11時間の標準開所時間は、8時間労働の保育士がローテーションでカバーしています。「朝夕の利用者は少ないからできるでしょ」というのが国の言い分です。しかし、お迎えのピークは午後6時から7時の間にずれこんでいます。

延長保育については、補助金と利用料から最低限の人件費は出ていますが、どこの園でもローテーションをぎりぎりの人数で回している状態です。

午前7時から午後8時まで開所するある保育園では、午前6時45分から午後8時15分までの時間帯を、各8時間45分勤務の5つのシフト(休憩時間45分間を含む)でカバーしています。

このローテーション勤務がネックとなり、出産後は正規では続けられないという保育士も少なくありません。子育て中の保育士が遅番をこなすにはパートナーや祖父母の助けが必要であり、パートナーが長時間労働者だと継続は困難になります。経験を積んだ保育士が継続できないことは、保育の質にとっても痛手です。

全体として日本の保育は、ほかの国と比較して、開園時間が長くて保育士の数が不足している状態です。同じ労力とコストでも開園時間を短くすれば、待機児童対策が進めやすくなるでしょう。しかし、今のままでは難しいかもしれません。

「保育先進国」に遠く及ばない日本

今年2月、認可保育園の0歳児の保育時間を一律に午後5時までとしていた東京都荒川区で反旗が翻りました。荒川区は「0歳の間は家庭で育てることが子どもの健やかな成長につながるため」と説明していました。

しかし、親たちは、時短勤務ができず復職できない人、毎日午後4時に帰ることで肩身の狭い思いをする人、給与が大幅削減される人がいると訴えました。ネットで多くの共感を集め、メディアも取り上げた結果、陳情が採択され、この4月から家庭の事情に応じて0歳児の保育時間も延ばすことが決定しています。

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