品切れも当然「自然派きくち村」が放つ異彩 大ヒットから身を引く「また来年」の考え方

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 「化学肥料には土壌消毒や殺虫の効果がありますが、肥料に含まれている硝酸態窒素は発がん性物質です。さらに、硝酸態窒素は作物を通じて人間の体内に入り、鉄分と結びついて酸素欠乏を起こします。牛ふんや豚ぷんなどの堆肥も安全とは言えないでしょう。

家畜に打っている抗生物質やホルモン剤はふんが発酵しても消えず、やはり作物を通じて人間の体内に入るからです。微量であっても、化学物質過敏症の方にとっては反応を引き起こしかねません。私たちはこういった方たちでも安心して食べられるものを作りたいと思っています」(渡辺さん)

左奥が渡辺義文さん。本部に研究所を併設し、本物の食品開発を日夜繰り返している。右奥が筆者(写真:ファクトリエ提供)

化学肥料が使われている理由は、作物が早く育つから。現在の農業は原価低減に主眼を置いており、大資本の下でとにかく効率化が図られています。

有害物質が肥料に含まれていようが、除草剤をかけても枯れない遺伝子を種に組みこもうが、作物として形状が整っていればそれでいい、買い手は日々の生活に追われているから生産過程など気にしないだろう。そんな思考が透けて見えます。

価格はすべて生産者が決定

かつては各家庭でみそやしょうゆを作っていたように、自然のサイクルを生かした食品づくりはごく当たり前のことでした。そう考えると、「人にも地球にもやさしいものを、時間をかけてつくりたい」という渡辺さんのスタンスは特段変わったものではなく、原点に立ち返っていると言えます。

商品開発の段階では販売価格を一切考慮していないとのこと。一時は価格を抑えることも考えたものの、自分たちのポリシーとはなじまなかったそうです。

「市場に流通している油の値段が高いなと思い、菜種油をつくることにしました。菜種油は、圧縮機械で菜種を絞って不純物を沈殿させ、上澄みを採取するという方法で出来上がります。不純物を完全に取り除こうと試みた結果、事前リサーチでは300坪の畑から180キロの油が取れるはずが、たった30キロしか取れませんでした。

結局、他社よりも値段は高くなってしまったのですが、野菜につけるだけで本当においしいし、自信を持ってお客さんに勧められる。他の商品も同じで、つくってから価格を設定しています」(渡辺さん)

きくち村では渡辺商店以外の商品に関しても、価格はすべて生産者が決めています。 このシステムは若い生産者にとっては大きなメリット。なぜなら、高齢の生産者は年金が支給されているため、販売価格を抑えることで利益を多少下げたとしても、ある程度の生活が保障されていますが、若手は状況が違います。

直売所で同じ商品が並んだときに若い生産者のほうが相対的に高く見えるため、足並みそろえて価格を下げざるをえない状況にありました。

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