東横イン「12年前の失態」から遂げた大変身 車いす利用者が格段に使いやすいホテルに

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私の友人で同じく車いす生活をしている相良明徳さんは、「どこか泊まる場所を探す場合には真っ先に東横インが思い浮かぶ」と話す。その理由として、バリアフリー設備の安心感に加えて、従業員の丁寧な対応を挙げてくれた。

車いす利用者は健常者に比べてタオルを多く使う。風呂に入るときには、自分の車いすのクッションの上にもタオルを敷く。そうでなければ風呂から上がったときにクッションがずぶ濡れになってしまう。その際、追加のタオルをお願いしても、快く用意してくれるのが東横インだという。確かにほかのホテルではこのケースで追加料金がとられることが多い。

バリアフリールームの「見える化」

私は東横インを含み、ルートインホテルズやアパホテル、スーパーホテルなど国内30カ所以上の施設を持つホテルチェーン25社を対象に、ホームページ上でどれだけバリアフリールームの「見える化」が進んでいるかを4つの視点から調査してみた。

①バリアフリールームの掲載があるか

②FAQ(よくある質問)にバリアフリールームの有無についての掲載をしている、もしくはバリアフリールームの説明ページがあるか

③部屋の画像があるか

④部屋の間取りがあるか

詳細は割愛するが、この4つすべてを唯一満たすのが東横インだったことからも、車いす利用者にとって使いやすいホテルだと言ってしまっていいだろう。

私は2016年11月~12月にかけて、自分のクルマで日本1周にトライした。その際、27日間の宿泊の半分が東横インだった。もし東横インがなければ、日本1周の旅は成功しなかったといえるくらい宿泊施設探しは大変だった。しかも東横インに泊まっていたときに2度ほどハプニングがあった際も、従業員の方々はすぐに駆けつけてくださり、とても助かった。

ただし、残念ながらバリアフリー化された東横インの情報は、世間にあまり知られていない。ある新聞社の障害者スポーツを担当している記者に「東横インが車いすユーザーに使いやすいホテルってご存じですか」と聞いても「知らなかった」という返答だった。

さすがに騒動をいまだに引きずってはいないと思うが、マスコミから一度たたかれてしまうと、前向きな情報を積極的に発信できなくなるのだろうか。あるいはマスコミが伝えにくいのだろうか。東横インはかつての失態を糧に設備をはじめとして障害者が泊まれる施設としての改善に取り組み、私のような車いす利用者からの信頼に変えたように見える。

白倉 栄一 車椅子ライフデザイナー

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しらくら えいいち / Eiichi Shirakura

1972年千葉県生まれ。1995年イオンリテール㈱入社。1年後の24歳で交通事故に遭い、一生車椅子生活の宣告を受ける。復帰後は、仕事の効率化・チームビルディングに挑み、38歳で人事総務課長に就任。従業員の働きやすい職場風土を目指し、お客さまへのサービスレベルを向上させた結果、店舗のお客さま満足度調査 全国1位獲得に貢献。仕事の傍ら、2005年から車椅子利用者向けの情報ブログを作り、1000件以上のバリアフリースポットを調査。2016年には念願だった日本1周を果たす。その後、同社を退職。2017年8月に「バリアフリースタイル」を起業し、車椅子でも利用できる環境を創っていくための活動を開始。長年のバリアフリー調査の実績と店舗における従業員満足・お客さま満足に取り組んだ経験を活かしながら、小売・飲食・宿泊施設のバリアフリー化を進めている。会社HP:http://baria-free.jp/

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