阪急電車「美しいマルーン色」の秘密は塗料だ 建物や自動車とは違う「鉄道塗装」の特徴

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鉄道で水性塗料を用いているのは、台車や床下機器等を中心に、塗装の目的が美装ではなく、もっぱら金属の保護を目的とする部位に集中している。ゆえに、阪急の現場においても手塗りを行っている。

自動車と鉄道車両の差は、持てる設備の圧倒的な違いによる。自動車は国内だけで年間900万台以上、1日換算2万5000台が製造される工業ライン生産品である。ゆえに自動化された巨大な設備が用意されている。

端的に言えば、水性塗料は、溶剤が水であり揮発性溶剤より乾燥(蒸発)に時間を要するため、ホコリ等の付着の可能性が高まる。そのため製品を台なしにしないためにはクリーンルームのような完璧な設備が必要で、逆にそれで温度や湿度も一定の最高環境が整えられる。さらに、蒸発の速度がより遅い冬や、湿度が高くて白濁しやすい夏でも関係なく品質を均一化できる。その設備を設けても大量生産品はコストに見合う。

基本的には一層塗り

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対する鉄道は、どこも、多くて日に2~3両といった小単位だから、比較すれば簡便な設備で済む速乾性の有機溶剤系で塗装が行われる。また逆に、小単位に過ぎないことから有機物質の使用量も少なく、問題化する環境負荷とならない。阪急電鉄でも過去に水性塗料で車体塗装をするテストを行った。しかし、現行設備の下では経年の退色も著しかったために断念したと言う。

また、自動車の新車は4層の塗り重ねで、長年、新車並みの輝きが維持できるほどとなった。それに対して鉄道車両は、発色のため下塗りを行うこともあるが、基本的には一層(塗り分けならば部分的に色を重ねることになるが)である。頻繁に洗車を行い、さらに4年に一度は塗装するという前提に立てば、自動車ほどのハイクラスの塗装を求める必要はない、ということでもある。

なお、最近は鉄道車両にもハイグレードな「ななつ星」や「四季島」「瑞風」などが出現し、E655系「和(なごみ)」といった特別な車両も登場しているが、これらの高価格商品にふさわしいレベルの塗装に関しては、一般車両の場合とはまったく別のカテゴリーと考えてよいようだ。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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