小田急「ロマンスカー」新ダイヤで沿線に明暗 喜びの海老名、通過の向ヶ丘利用者は「困惑」

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そこで、筆者は向ヶ丘遊園駅・新松田駅を含む、朝下り特急の通勤利用の実態を視察するべく、2月のある平日に、新宿駅7時27分発特急「はこね83号」箱根湯本行き8号車に小田原駅まで乗車した。

この列車の一番のボリュームゾーンは町田駅―本厚木駅間である。8号車では、向ヶ丘遊園駅からの乗車は数名にとどまったが、町田駅から15人前後が乗車し、本厚木駅で20人を超える下車があった。全員がこれから出勤する様子の旅客であった。その後、伊勢原駅と新松田駅では同じく職場に向かうと思われる人たちが数名ずつ下車すると、車内は空席ばかりとなった。そして、小田原駅では新幹線に乗り換えると思われるビジネス客が多くを占め、通勤利用はほぼ見られなかった。

また、2月の別の平日に、向ヶ丘遊園駅9時39分発特急「さがみ76号」新宿行きに乗車した。同駅からの乗車は数名で、同列車の乗車率は約7割であった。ピークを過ぎた時間帯であり、着席ニーズが相対的に低くなるのは必然である。現状、ピーク時に同駅停車の特急の設定がないのは、町田駅以西からの乗車で満席となり、向ヶ丘遊園駅からの乗車を受け入れる余裕がないからである。代わりに、ダイヤ改正後は同駅始発9時00分発千代田線直通準急(平日ダイヤ)が設定され、着席機会は維持される見通しだ。

特急停車がなくなる駅も利用は多い

向ヶ丘遊園駅停車取り止めの理由としては新宿駅からの距離が近いこと、より多くの利用が見込める多摩線接続駅の新百合ヶ丘駅に停車駅を移す方がメリットが大きいことが考えられる。また、新松田駅については、小田原駅との距離が近いこと、JR御殿場線直通特急「ふじさん」の松田駅停車が継続されるため一定の利便性維持が図られることを挙げることができる。また、対新宿駅で考えると、小田原駅までの特急料金が890円なのに対して、新松田駅までは690円と200円も安く、小田急にとって収入面のメリットに乏しいことも同駅への特急停車取り止めの背景にあるだろう。

しかし現状では、向ヶ丘遊園駅・新松田駅に停車する特急には一定の利用があることも確かだ。特に向ヶ丘遊園駅は東京都世田谷区民に、そして新松田駅はJR御殿場線沿線住民にとって、重要な特急停車駅である。しかし、特急停車を取り止めることのメリットの方が大きいと判断された結果の停車取り止めであると推察される。

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