小田急「ロマンスカー」新ダイヤで沿線に明暗 喜びの海老名、通過の向ヶ丘利用者は「困惑」

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決断の背景には、競合路線への対抗戦略を打ち出す必要性に迫られた事情があったことは確かだ。まず、朝上りに相模大野駅・町田駅・新百合ヶ丘駅に連続停車する特急を設定する大きな狙いとしては、小田急線と東京急行電鉄(東急)田園都市線の中間地点に住んでいる人たちに着席通勤をアピールすることで、小田急線を選択してもらうことにあるだろう。

また、海老名駅が始発の相模鉄道(相鉄)本線が2019年以降にJR東海道本線・東急線への直通運転を開始すると対都心輸送で強力なライバルとなることは確実だ。早めの対抗策が、出勤時および退勤時の海老名駅停車特急の新設や増発なのだ。

それでもなお、日中時間帯では海老名駅に停車する特急は本厚木駅を通過し、逆に本厚木駅に停まる特急は海老名駅には停まらないダイヤは維持される。

特急停車が減る駅、なくなる駅

実際、平日は本厚木駅に停車する特急が減ったため、筆者を含め本厚木駅に停まる特急の利用を減らした旅客もいる。同駅周辺の事業所への通勤などに特急を利用する人たちからは「本厚木駅に停まる都合のよい時刻の特急がない場合、急行を利用する機会が増えた」という声も聞かれる。

「スーパーはこね」以外の特急は、両駅への停車を基本とした方が小田急にとっては利用客が増えることで企業価値が向上し、旅客にとっては利便性向上につながるはずだ。そして、地域にとっては、特急停車本数増加を定住人口および交流人口の両方の増加に向けた強力なアピール材料として活用できる。まさに「三方よし」であり、昨今のESG投資の潮流にも対応する。

一方、ロマンスカー通過駅となる地域も生まれる。向ヶ丘遊園駅と新松田駅の特急停車が取り止めとなるためだ。向ヶ丘遊園駅所在地の神奈川県川崎市役所まちづくり局交通政策室の担当者は「登戸駅に快速急行が新規停車することは朗報だ」としながらも、「向ヶ丘遊園駅に停まるロマンスカーがなくなることは残念だ」と複雑な思いを示す。同駅周辺に在住する70代男性も「向ヶ丘遊園駅を70年間にわたって利用しているが、特急通過駅となることは考えられない出来事だ」と困惑する。

また、御殿場線沿線の自治体関係者からも「御殿場線との乗り換え利便性を向上させるために、新松田駅停車の特急を増やしてほしい」と、小田急による同駅通過の方針とは真逆の要望が聞かれる。

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