安倍政権の「待機児童政策」は問題だらけだ 自治体は待機児童数を"過少報告"している

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

迷走を続ける政府の待機児童政策。それを象徴するような会議が2018年1月に開かれました。無償化に向け、認可外保育所の対象範囲を検討する有識者会議に参加するメンバーの顔ぶれを見たとき、筆者は驚きました。

専門分野においては大変な権威の方々がそろったのですが、4人いるメンバーはなんと全員60代もしくは70代でした。10年以内に保育所を利用した当事者はもとより、保育事業経験者もいません。保活の当事者も保育の事業者もいない中で、無償化の範囲が決められようとしています。

筆者もこの会議の初会合に意見聴取で呼ばれましたが、認可外利用者のヒアリングは都内在住者の計3名で、時間も1~2時間程度でした。政府は6月の骨太の方針までに無償化の範囲を決める予定ですが、会議は月1回しか開かれません。東京以外でも待機児童問題に関して意見を聴くなど、もっと丁寧に進めるべきではないでしょうか。

筆者は政府への働きかけだけでは物足りず、多くの国会議員と直接対話を重ねてきました。しかし、「僕の選挙区には待機児童はいないから」「東京だけの問題だよね」といった反応がほとんどでした。そこで、議員の選挙区にあたる地域の待機児童数を教え、保活の大変さを説明すると「それじゃ大変だ」という反応が返ってくるありさまです。

このように、待機児童問題が解決しない背景には、「当事者以外の無関心」も挙げられます。待機児童の問題が「母親のみ」に矮小化されてしまっているのが現状だと言わざるをえません。

待機児童問題は日本全体の問題だ

今後、労働力不足から専業主婦という概念は時代とともに消えていき、性別・年齢に関係なく誰もが働く社会になっていくとみられています。

そうした中で、保育所に子どもを預けられなければ、母親が働きに出られません。父親側にとってもシングルインカムとなり、終身雇用が終焉を迎える日本においては、家計の経済的リスクが高まります。

また、女性が第1子出産時に退職することで失われる生涯年収は2億円ともいわれ、待機児童問題は女性だけではなく、父親である男性のライフプランにも大きくかかわってきます。

今から20年経てば、子どもたちは社会を担う存在になっていきます。今、若くて子どもがいない人たちが40代を迎える頃、部下や同僚になるのが今の子どもたちです。今40代以上の世代が将来受給する年金を稼ぎ出してくれるのも、これから生まれる子どもたちです。今こそ、待機児童の解消へ向け、社会全体で取り組むべきです。

今後の日本の経済社会を左右する待機児童問題。国を誤らないためにも、政府は、(1)待機児童数を再検証して目標値を改め、(2)無償化を延期して全入化に予算を投入したうえで、(3)当事者を議論の中に入れて「子育て政策」を見直すべきです。

天野 妙 合同会社Respect each other代表、みらい子育て全国ネットワーク代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

あまの たえ / Tae Amano

日本大学理工学部建築学科卒業。株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)等を経て、性別・役職・所属・国籍に関係なく、お互いが尊敬しあう社会づくりに貢献したいと考え、起業。ダイバーシティ/女性活躍を推進する企業の組織コンサルティングや、研修など、企業の風土変革者として活動する傍ら、待機児童問題をはじめとした子育て政策に関する提言を行う政策起業家としても活動中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事