大胆すぎる「楕円形」電車はこうして生まれた 神秘的?キモい?京都・叡山電鉄の新型車両

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京阪グループには、叡電の叡山本線のほかにも比叡山へのアクセスルートとなる鉄道が存在する。琵琶湖畔を走る京阪電鉄の石山坂本線だ。同線の北側の終点、坂本駅(滋賀県大津市)は滋賀県側からの比叡山への玄関口だが、京阪は3月17日に実施するダイヤ改正に合わせて同駅を「坂本比叡山口」に改称する。

これは、京都側からの比叡山アクセスルートである叡山本線の八瀬比叡山口駅と「比叡山口」の名称を合わせた駅名だ。京阪グループは2015~2017年度の中期経営計画の中で、「比叡山・びわ湖観光ルートの確立」を「観光創造」の柱の1つに掲げており、「名称をそろえることでどちら側からでも比叡山に行くことができるということをアピールするとともに、比叡山・琵琶湖エリアの回遊性を高めたい」と京阪ホールディングスの広報担当者はいう。

叡電の観光利用者数は叡山本線よりも鞍馬山へ向かう鞍馬線のほうが多いといい、叡山本線の観光活性化は京阪グループ全体にとっても重要だ。「ひえい」は新たな目玉として、この観光ルートの一翼を担うことになる。

外観同様のインパクトを生むか

楕円形の窓が目立つ側面。試運転では駅などで注目を集めるという(記者撮影)
改造の基となった700系の同型車両(記者撮影)

訪日外国人観光客の増加などでにぎわいの続く京都。近年は観光客による交通機関の混雑も話題となっているが、叡電の場合は紅葉シーズンの11月と、川の上の座敷で食事などを楽しむ「川床」が人気の7~8月に観光客が集中し、「繁閑の差が大きい」(坂東常務)のが一つの課題だ。

「ひえい」は、その点でも期待できる部分があるという。車外の風景を楽しむパノラマ車両は季節ごとの景観に左右される部分があるが、「ひえい」は季節に関係なく、車両そのもののユニークさが売りとなるためだ。

大胆な外観デザインが登場前から注目を集めてきた「ひえい」。報道公開にも多くのメディアが集まり「当社にとってこれだけ(多くのメディアが)来られるようなことはたぶん初めて」と叡電の担当者は驚きと嬉しさを口にした。すでに始まっている試運転では「ホームや踏切で見た方がほぼ必ず振り向く」(坂東常務)という強力なインパクトのある新観光車両。叡電と京阪グループの観光戦略にも同様のインパクトをもたらすだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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