米金融危機、75兆円不良債権買い取り策は悠長過ぎる



 そうした中で、アジア諸国でドルに対する自国通貨安が由々しき水準にまでなってしまった。その結果、自国通貨防衛上、為替介入も積極化せざるをえなくなり、外貨準備の減少を引き起こし始めている。

9月17日の記者会見で白川方明日銀総裁が語ったように「90年代のアジア通貨危機時点に比べると、アジア諸国の外貨準備残高は随分と高くなった」ことは間違いないが、外貨準備はいったん減りだすと、つるべ落としになりがちだ。このまま、ドル危機によって発生したあだ花のようなドル不足によるドル高が続くと、つるべ落としの様相が強まりかねないリスクがある。つまり、アジア通貨危機のリスクである。

もちろん、それ以前の問題として、欧州でも証券化商品の価格喪失で銀行危機が蔓延している。リーマンのような破綻がいつ表面化してもおかしくないし、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の急激な増殖が世界中の地雷原となってきている。地雷がどこに埋め込まれているのかすら不明ときている。

そんな情勢下にあって、米政府が90年代のRTCモデルを導入しようというのは、あまりにも間に合わせの策と言わざるをえまい。

もっとも、米政府が提出したRTC型の救済パッケージは下院で否決されてしまった。当然と言えば、当然の成り行きだ。そこで政府は修正案を再提出した。最大の修正点は預金保険上の保証対象金額の引き上げだ。従来の10万ドルを25万ドルに引き上げるというものであり、見掛けは国民への便宜拡大のようにみえるが、実態は異なる。

預金流出に直面した地方銀行の経営安定化策にすぎない。前述のパッチワーク策に伴う事態への新たなパッチワークである。

救済パッケージの成立にはまだ時間が費やされる見通しであり、しかも、成立しても実効性は乏しい。巨大なパッチワークだからだが、成立しなければ金融市場がさら荒れることはまちがいない。

抜本処理がドルも救う

世界的な流動性危機の背景にあるのは、主に米国、そして、欧州の巨大金融機関の資本不足にほかならない。それがあまりにも明らかであるがために、歴史的と言えるほどの基軸通貨の流動性危機が発生しているのだ。

米国は第2次大戦後、基軸通貨国となったが、その歴史の中盤から米国は節度を失った基軸通貨国として振る舞ってきた。巨大な財政赤字を海外資本に依存する体質はその一例だ。その中で、化け物のように巨大化したのが投資銀行などのホームグラウンド、ウォール街だった。そのウォール街もまた節度を失って宴に明け暮れた。

しかし、いま発生しているのはウォール街だけを震撼させる出来事ではない。何よりも、米国政府はRTCというような悠長な枠組みではなく、1930年代の大恐慌の際に導入したRFC(金融復興公社)の現代版を設立し、公的資金投入による銀行、投資銀行からの株式買い上げを行うべきではないか。

公的資金投入は政治家、経営者など関連した当事者たちの責任追及なくしては実現できない。それだけに、当事者たちが及び腰になるが、もはや、これを躊躇する余裕はなくなりつつある。

いずれにしても、問題解決のために米国は巨額の財政資金を調達しなければならないが、すでに米財政の悪化は著しい。下手をするとドル危機を招きかねない。米国は1970年代のカーターボンドのようにドル以外の通貨建てのファイナンスを迫られかねない。そうならないためにも、米政府は徹底処理による「節度の回復」を世界に向けて訴えるべきである。
(浪川 攻 =東洋経済オンライン)

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