安倍首相vs朝日、「書き換え疑惑」で最終決戦 財務省決裁文書は1強政権の時限爆弾か?

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朝日新聞が報じた疑惑は、森友学園への国有地売却の契約に関する近畿財務局の決裁文書と、財務省が森友問題発覚後に国会に開示した決裁文書が一部で異なっている、というもの。具体的には、近畿財務局が2015~2016年に森友学園と国有地の取引をした際、同局の管財部門が決裁を受けるために作った文書に関し、交渉経緯や取引の内容などに関する部分が「事後に改ざん」された可能性がある、との指摘だ。

朝日の報道の根拠は、(1)決裁文書を確認した結果、契約当時の文書と昨年財務省が国会に開示した文書は、起案日、決裁完了日、番号が同じで、決裁印もある、(2)しかし、契約当時の文書にある森友学園との時系列のやりとりや、同学園の要求への対応を詳述した部分が、開示文書では項目ごとなくなったり、一部が消えている、ということ。

森友学園問題は、昨年2月、朝日新聞が「国有地が不当な大幅値引きで同学園に売却された疑惑がある」と報道したのがきっかけ。国会での野党の追及に対し、財務省当局は「法令に則った適正な取引」(当時の佐川理財局長)などと疑惑を否定する答弁を繰り返したが、その後、交渉の部分的な録音記録が判明したことなどから、国会では佐川氏の「虚偽答弁」疑惑の追及が続いてきた。併せて、一連の問題をめぐっては、大阪地検特捜部が財務省当局に対する背任容疑の告発を受理し、昨年9月から関係者への任意の事情聴取などを進めてきた経緯がある。

「確認」との朝日報道に他紙は慎重だが

そうした中、永田町関係者が注目するのは「朝日報道」の信ぴょう性だ。同報道では当該文書について「入手した」とは書かず、「確認した」との表現にとどめている。この点については自民党内でも「ブツ(原本のコピーなど)はなく、提供者に見せてもらっただけでは」との見方も浮上している。これだけ重大な疑惑にもかかわらず、他メディアはそろって後追いもせず、事実関係についても「朝日新聞によると…」という慎重な対応だからだ。

しかし、朝日新聞は一貫して森友問題での疑惑報道の先頭に立ち、一連の経過の中で判明した報道内容での事実関係の誤りについては、国会などで首相から「朝日は事実でない報道をした」と繰り返し批判された経緯もある。このため、関係者の間では「確実な裏付けがなければ報道するはずがない」(大手紙幹部)との声も多く、永田町では「朝日新聞が潰れるか、安倍政権と財務省が共倒れになるか、という究極の戦い」(閣僚経験者)という見方も広がる。

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