池上彰が斬る米国の内幕「炎と怒り」の本質

トランプ陣営は元々選挙に勝つ気がなかった

これはあまりに大げさな表現だろうが、庶民が悩んでいる医療保険制度とは無縁に過ごすことができてきたトランプ氏には関心がないのは確かだろう。オバマケアを批判はしても、どのように改革するのかについてのコメントはない。オバマ前大統領が導入した施策のすべてをひっくり返したいという思いだけが伝わってくる。

衝撃の内情を暴いた著者の手の内

本書の中身は、「そうだろうな」と納得するエピソードが満載だが、あまりにショッキングな内容が続くので、「本当だろうか」という疑問も湧くだろう。

こういう疑問を持った読者を納得させるには、「秘密の暴露」が有効だ。ホワイトハウスの奥の院でしか知られていないことを暴露するのだ。それが奇想天外であればあるほど、とても想像では書けないことであり、かえって書の中身が信頼できるということになる。たとえばトランプ大統領が、寝室の内側に鍵をつけさせたことや、テレビを新たに2台入れさせ、常時3台のテレビを見ながらハンバーガーを食べているという話。

さらに衝撃的な「秘密の暴露」が、トランプ大統領の髪型の秘密だ。彼の髪型はあまりに不思議で、カツラ説も出ていたが、トランプ氏は否定してきた。これについて、なんとトランプ大統領の娘のイヴァンカ氏が、父親の不思議な髪型の理由を友人に話して聞かせたという。頭頂部の禿を隠すために周囲の髪をまとめて後ろになでつけ、ハードスプレーで固定しているというのだ。ここでは、ヘアカラーのブランド名まで明らかにされている。

神は細部に宿る、という言葉がある。こうした細かい事実の描写が説得力を増すことになる。細部にまでわたった暴露の表現は、いささか下品に陥りがちだが、深い取材の結果であることをうかがわせる。

実は著者のウォルフ氏は、大統領選挙運動中にトランプ氏に気に入られ、大統領に当選後は、ホワイトハウスの中で自由に取材できたという。政治の素人の集まりでは、場を仕切る人がいないから、ジャーナリストが勝手に歩き回っても、誰ひとり制止することもなく、自分たちの発言に気をつけることもなく、完全に身内の扱いをしていたという。

陣営幹部同士の会話を立ち聞きしていたに違いないと思えるシーンも出てくる。トランプ大統領のことを平然とバカにする発言が身内から次々に飛び出してくるのは驚きだが、彼らは、まさかその発言が公になるとは思っていなかったのだろう。

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