安倍政権、与党内の暗闘で「9条改憲」は迷路に

自民内で「安倍おろし」の政治的謀略も浮上

しかし、自民党内では石破茂元地方創生相らが「(戦力不保持の)9条2項をそのままにしての自衛隊明記では違憲論を払拭できない」などと異論を唱えている。民主党政権下の2012年に石破氏らが中心となってまとめた自民党改憲草案には、9条2項の削除と国防軍保持が盛り込まれている。これを踏まえて、石破氏は「総裁(首相)が勝手に党の方針を変え、それを党機関でも多数決で決めるというのはおかしい」と主張しているわけで、「総裁選での最大の争点になる」(石破氏)と9月の総裁選で首相に9条論争を挑む構えだ。

一方、党内の改憲論議を再開した公明党も、9条改正案には難色を示す。「平和の党」が売り物だけに、支持母体の創価学会では婦人部が9条改正に反対しており、山口那津男代表も「改憲は少なくとも野党第1党の協力が必要で、まずは国会で徹底的に議論すべきだ」と繰り返す。額面通りに受け取れば「安倍改憲」への徹底抗戦を明確にしている野党第1党の立憲民主党の理解や協力がなければ、公明党も国会発議には同調しない方針ということだ。

首相サイドには「総裁選で首相が石破氏に圧勝すれば党内の9条論争も決着し、公明党も与党として国会発議に協力せざるを得なくなる」との楽観論もある。ただ、2019年には春の統一地方選と夏の参院選が控えるだけに、公明党は「選挙前の改憲発議には協力できない」(幹部)との立場を変える気配はない。公明党の存在も年内発議への「大きな壁」(自民幹部)となるのは確実だ。

しかし、公明党への配慮で国会発議を2019年夏以降に先送りした場合、次期参院選で改憲勢力が「3分の2」を割り込めば、参院での発議自体が困難となる。その場合、首相が既定路線化している総裁3選を果たし、2021年秋までの「史上最長政権」が可能になったとしても、任期中の悲願達成への道筋は現状よりはるかに険しくなる。

最大のハードルは国民投票

首相にとってさらにハードルが高いのが国民投票だ。衆参両院が9条改正も含めた改憲条文を3分の2以上の議員の賛成で発議すれば、「60日以上、180日以内」に国民投票が実施される。現時点で自民党内の改憲推進派が想定する最速の改憲日程は、「年内発議―2019年春までの国民投票実施」とされるが、当然、その大前提は「国民投票での賛成多数獲得」だ。

憲法改正手続きの最終関門として法制化された国民投票では、「投票総数の過半数」で改憲が成立する。ただ、現行法では最低投票率が定められていない上、仮に投票率が国政選挙並みの50~60%程度となれば、数字上は全有権者の3割程度の賛成でも改憲が実現することになる。憲法改正に国民投票制を導入しているフランスの場合、過去10回実施された国民投票で投票率3割台が2回もあった。もちろん、「国民の関心が低い改憲内容だったのが理由」(専門家)とされている。日本の場合、平和憲法の象徴でもある9条改正がテーマとなれば「国民の関心も高く、国政選挙並みの投票率は確保できる」(同)との見方は多い。

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