──現役の医師、ジャーナリストとして、見逃せなかった……。
取材を進めるうちに、この問題は専門家として科学的な解釈を述べるだけではとても描ききれないと思った。3年にわたり、被害を訴える女の子や親、医者、症状から回復した女性、複数の診療科の医療関係者、行政関係者などに取材を行った。
女の子たちの将来を考え、真実を伝えたい
──「子宮頸がんワクチン問題は医療問題ではない。日本社会の縮図だ」と書かれています。
この本の根底を貫くメッセージは、フェイクニュースやオルタナティブファクトがあふれている時代に本当の意味での真実をかぎ分けるリテラシーを持てるか、ということ。いくら偉い先生が言っていても、信頼できそうな大メディアが書いていても、科学的に正しいかどうかはわからない。
子宮頸がんワクチン問題で本当に困っているのは女の子たち。だが、医者や弁護士、親、ジャーナリストと称する人など周りのいろんな大人が、女の子たちとワクチンを結び付けて勝手なことを言う。
その中で、被害者は誰なのかといえば、接種していてもしていなくても、やはり女の子たちだ。ワクチンを恨みながら、国賠訴訟に身をささげ、青春を棒に振ってしまう子もいる。接種する権利も打つチャンスもあったのに逃してしまう子もいる。そうした女の子たちの将来を考え、真実を伝えたいという一心で書き続けてきた。
──具体的な女の子のエピソードが盛り込まれていますね。
女の子一人ひとりに物語がある。多くはなかなか表に出てこない。出てくるのは、ワクチンのせいだ、ワクチンは怖いという声ばかり。一方で病状が治った子はとにかく思い出したくないと伏せる。これらのケースをWebに出すと、この子たちへの攻撃が、徒党を組んで執拗に行われる。薬害に否定的な事実が出るだけで驚くほど攻撃的になる人たちがいる。本質でない事実や印象が拡散して、真実は何なのかわからなくなってしまう。
──ご自身も、薬害が証明されたかのような研究発表について捏造だと書き、名誉毀損で訴えられています。
訴えている医者は、大学の副学長で医学部長、教授でもあった人物。厚生労働省の指定を受け、子宮頸がんワクチンによる副反応の研究班の主任研究者をしていた。薬害を唱える医師の中では良心的だといわれていたので、記事に納得できなければ、学会や公の場で反論するだろうと思っていた。そうではなく、薬害団体と一緒になって私を訴えてきたのには驚いた。今や反ワクチン運動のカリスマ的な存在になっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら