急速に冷え込む戸建て分譲住宅、価格・企画力の競争激化

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 東京・杉並区の住宅地で大幅値引きのチラシが配られている。カーポート付きの2階建てで、販売価格1億0980万円の数字に赤いマジックで9780万円と書かれている。販売する会社は東証1部上場の創建ホームズ。同社は8月26日に民事再生法の申し立てを行った。1994年の設立以来、「東京の城西・城南地区、横浜地区及び埼玉南部地区においていわゆるニューリッチ層を対象とする戸建て分譲開発」(会社資料)を行い、07年2月期には最高益を計上。そんな会社が1年半で、負債総額338億円を抱えて民事再生に追い込まれた。戸建て市場に何が起きているのか。

分譲住宅は土地を持たない第1次取得者向けに販売される住宅だ。家づくりのためには、まず用地を先行取得する必要がある。同社の場合、地価の高い地域での用地取得を前提に高単価住宅を販売してきた。ところが、地価上昇に加え、昨年後半以降、改正建築基準法による着工の遅れや株式市場の下落から主力購買層が様子見姿勢に徹しだした。兼営するマンション分譲も同様の状況となり、わずか1年で資金繰りに窮した。

この点はパワービルダーといわれる分譲住宅会社も同様だ。東栄住宅の前期営業利益は64%減。やはり用地高と値引き販売がダブルパンチになった。「当社の分譲用地は都心ほど地価が高くない点は救いだが、まだ高値在庫は吐き出しきれていない」(IR担当者)と言う。

分譲住宅の着工戸数(下グラフ参照)は近年堅調が続き、特に04~06年度の3年間は13万戸台が続いた。30代の団塊ジュニアのファミリー層が購入を拡大したからだ。その戸建て分譲も市場の冷え込みから経営体質の改善を求められている。過大な土地在庫の一掃や低価格化はもちろん、住宅性能表示や耐震性能をアピールする方向へ向かっている。

一方、持ち家は注文住宅や建て替えを示すが、ここ10年、一貫して減少が続く。この中には「売り建て」と称して、土地購入後に注文住宅を建てるケースも含まれるが、分譲に比べトータルの価格が高くなることが多く、敬遠されることが多かった。団塊世代の退職に伴う建て替えも「想定以下」(業界関係者)が続く。

このため、業界では持ち家市場のパイ縮小を前提に、低価格の商品開発に力を入れ出した。住友林業「セレクトワン」、ミサワホーム「スマートスタイル」、三井ホーム「バーリオ」などがそれで、間取りや部材の規格を絞り込んで2000万円前後に抑え、堅調な売れ行きを見せている。持ち家層のリフォーム需要取り込みにも力が入ってきている。

ただ、主力市場である団塊ジュニアの一巡や少子化時代を目前に、分譲も持ち家も価格政策以外の非価格競争力をいかに生み出すかに頭を悩ますことになりそうだ。


(週刊東洋経済編集部)
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