小田急「GSE」と新幹線N700Sの意外な共通点 文系でもわかる「アクティブサスペンション」

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空気アクチュエータ式フルアクは北陸新幹線E7系、W7系のグランクラスにも搭載したほか、JR東日本の在来線特急車両のE259系成田エクスプレスの先頭車、E657系「ひたち」「ときわ」の先頭車とグリーン車にも採用された。また、私鉄でも京成AE形「スカイライナー」の先頭車、小田急ロマンスカー50000形VSEの先頭台車、近鉄50000系「しまかぜ」の全車両、そして東武500系「リバティ」の全車両に搭載されている。

東北新幹線E5系は電動式フルアクティブサスペンションを搭載(撮影:尾形文繁)
E5系の電動式フルアクティブサスペンション(筆者撮影)

乗り心地を最重要視する豪華列車、いわゆるクルーズトレインにもフルアクが採用され、JR九州77系「ななつ星in九州」の1・7号車、JR西日本87系「TWILIGHT EXPRESS瑞風」の全車両、JR東日本E001系「TRAIN SUITE 四季島」の2〜9号車に装備している。

東北新幹線で最高時速320km運転を行うE5系、E6系、H5系には電動式フルアクが搭載されている。E5系、E6系、H5系は空気バネストローク式車体傾斜装置を搭載しており、電動式として空気消費量の低減を図った。

E5系が採用した電動式フルアクはローターネジ式というものだ。簡単に説明するとアクチュエータの片端に回転する長いボルトを、もう一端にナットを備え、ボルトの回転に合わせて伸縮する構造となっている。

電動式フルアクは、レスポンスが速く制御力が強い。また、空気タンクや配管が不要なので、軽量化にも寄与している。在来線ではE353系新型「スーパーあずさ」にローラーネジ式が採用されている。今後近鉄で採用される電動式フルアクがどのようなものになるのかも興味深い。

最新型は油圧式

3月から営業運転を開始する小田急新型ロマンスカー70000形GSEは、営業用車両として初めて電動油圧式フルアクを全車両に搭載した。これはオイルダンパの減衰力を切り換えるバルブに代わり、ポンプでオイルを能動的に動かすことで、左右動揺を打ち消すものだ。

油圧式セミアクは今春に登場するJR東海N700Sのグリーン車にも搭載される。こちらは比例電磁式リリーフ弁セミアクに小型モーターとポンプを取り付けたものだが、乗り心地は大きく改善されるという。

油圧式のメリットは、細かい制御をしやすいことと、セミアク同様、メンテナンスが容易なことが挙げられる。

フルアクが営業車両に登場して15年。この間に空気式、電動式、油圧式と3タイプが登場した。すでに営業運転に導入されている空気式と電動式の効果は体感できるが、春から登場する油圧式フルアクティブサスペンションの乗り心地も早く体感してみたいところだ。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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