人生100年時代「稼ぎ続ける人」に肝要な選択 「学び直し」は今すぐできるライフ・シフトだ
新卒で共同印刷に入社し、他社で働いた経験がなかった領家氏にとって、ベンチャーの効率的な仕事の進め方やコスト意識など学ぶことは多いと話す。「当社もデジタル領域の仕事に取り組んでいるが、双方の得意分野を生かせば、ITベンチャーとの協業は可能であると気づいた」(領家氏)。こうした“気づき”も学び直しの成果といえる。
異職種体験は「副業」でも可能だ。最近ではDeNAやソフトバンク、コニカミノルタなど副業を解禁する大手企業も徐々に出ている。経済産業省の「働き手向けアンケート調査」(2017年)では、社会人の約半数が副業に前向きとされる。今後、副業を通じた学び直しの機運は高まりそうだ。
地方への転職に伴う“学び直し”も
何を学び直し、どうライフ・シフトにつなげるか――。その方法は人それぞれに委ねられるが、時代の大きなニーズも存在する。一つはインターネットやAI(人工知能)などデジタル関連の分野。そしてもう一つが、都心で働く大企業のミドル人材から地方企業の経営サポート役への“ライフ・シフト”に伴う学び直しだ。
現在、地方では後継者不足に悩む中小企業が多く、都心で働く大企業のミドル人材による経営サポート役の仕事に期待が高まっている。都心の経営幹部人材を地方企業に紹介している日本人材機構の小城武彦社長は、「地方企業のオーナーは孤軍奮闘しており、相談できる参謀が少ない。だからこそ、幹部人材の潜在的なニーズは山ほどある」と話す。
環境がまったく異なる地方の中小企業への転身のハードルを下げるための工夫も生まれている。その一つが“兼業”だ。栃木県足利市の精密部品メーカー・菊地歯車が2015年に設立した航空機部品子会社・エアロエッジ。従業員80人弱の中小企業だが、仏航空機エンジン大手・サフラン社と航空機部品の長期供給契約を結び、量産化を進める。
グローバル企業と直接取引するには、材料調達や工程管理、量産計画、顧客対応など、一連のプロジェクト管理が不可欠。地方の中小企業である同社にそれが可能なのは、外部人材の登用に秘密がある。
副社長はIHIのエンジニア出身の元コンサルタント、技術統括は、かつてトヨタ自動車で燃料電池車「MIRAI」の設計を手掛けたエンジニア、生産現場はキヤノンで海外の工場長などを勤めたベテランが仕切るなど、そうそうたる顔ぶれ。いずれも他の仕事との兼業で経営に参画する。「兼業人材の登用は専門能力の活用や人件費抑制、何より思わぬイノベーションを生む効果がある」と同社経営企画統括の永井希依彦執行役員は語る。
もちろん都心企業の人材が地方の中小企業に移って、誰もがいきなり活躍できるわけではない。永井氏は「従来の経験を横滑りさせようとせず、雑務を楽しんだり、ゼロベースで仕事に取り組んだりする姿勢が不可欠」と話す。これもビジネスパーソンにとっては「学び直し」の一環と言える。
「これまでの単線型キャリアの時代は、各人の専門分野でスキルの習得・習熟を繰り返せばよかった。しかし、グローバル化やIT化で産業構造が変わり、不本意な転身を強いられるケースが生じている。だからこそリカレント(学び直し)教育が求められている」。慶應大学大学院の高橋俊介特任教授はそう語る。
マルチステージの人生などと言われても縁遠い――。そう感じるビジネスパーソンにとって、今すぐできるライフ・シフトの一歩となるのが、学び直しなのである。
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