初公開!東急田園都市線の遅延原因一覧 乗客救護からドア点検まで最多の原因は何?

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電線類の点検作業には高所作業車も投入しているが、点検の主体はあくまでも人だ(撮影:尾形文繁)

東急には、こうした構造的要因が存在しているのか、いないのか。ケーブルの点検作業を終えた作業員に話を聞いてみたところ、「ケーブルに手を触れただけで異常を把握できるかどうかは経験が物を言う。若手社員では異常に気づかないかもしれない」という答えが返ってきた。

手で触ってどう感じるかは机上の講義ではわからず、実際に体験してみる必要があるという。作業を指揮する東急鉄道事業本部の伊藤篤志・電気部統括部長は「技術伝承はまさに課題」と認める。

建設現場などでは、工事を急ぐあまり下請け業者への指示が適切に行われず、不具合が生じたといった話をしばしば耳にする。鉄道の保守作業では本社社員と外注先の関係はどうなっているのか。

今回、深夜作業を行ったスタッフは全員が東急の社員。しかし、実際には協力会社の社員が作業に当たることもある。駅ホームの下にある高圧配電ケーブルは通常、コンクリート製の箱に覆われているため、緊急総点検では協力会社の作業員がふたを持ち上げ、東急の作業員が触手検査を行った。

このように、東急では明確な役割分担がなされ、「協力会社への指示は適切に行っている」と伊藤部長も外注時の情報伝達ミスがもたらすトラブルの可能性については否定する。

保線作業は人材の定着が課題

あるJR幹部は、「保線作業は深夜や休日の労働が多いため、より労働条件のよい別の業界に転職する人も少なくない」と危機を訴える。国交省は人材確保に向け働き方を変えるという提案を検討したいとする。外注だけでなく外国人労働者を活用する可能性も検討の俎上に載る。そうなってくると、指示の明確化はこれまで以上に重要になるに違いない。

「徹底的に点検を行ったので、今後トラブルが起きる可能性は絶対にないとはいえないまでも、確率的にはものすごく減った。安心してご乗車ください」と伊藤部長は太鼓判を押す。確かに、「従来の10~20倍もの作業量」(伊藤部長)というほど労力をかけて総点検を実施し、「今回の結果を踏まえ、4月以降も時間をかけて点検を行っていく」(同)というのであれば、地下区間での輸送トラブルはしばらく起きないかもしれない。

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