初公開!東急田園都市線の遅延原因一覧 乗客救護からドア点検まで最多の原因は何?

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東急の主力車両「8500系」。今後新型車両への置き換えが進む(スポッティー/PIXTA)

車両要因については、田園都市線では1970~1980年代を中心に製造された「8500系」が現在も主力車両として活躍中だ。改修工事も随時行っているが、老朽化は否めない。東急は今春から導入する新型車両「2020系」への置き換えが進めば、車両トラブルも減少するとみられる。

問題は混雑要因だ。混雑を原因とする遅延が5件なのに対して、乗客救護が8件。車内アナウンスでしばしば聞く、「前を走る列車で具合の悪くなったお客様の救護活動を行っているため列車が遅れております」というあれだ。混雑が解消されれば、乗客救護による遅延も減るはずだが、混雑解消の決定打は乏しい。

トラブル半減でも乗り入れ先への効果大

複々線化で利便性が向上する小田急線へのシフトも期待されるが、東急は混雑が目に見えて解消するとは考えていないようだ。これまで見てきたとおり、東急がさまざまな対策を講じたところで、トラブルはゼロにはならない。せいぜい半減が関の山だろう。

東急の新型車両「2020系」。老朽車両からの置き換えが進めば、車両トラブルの減少に期待がかかる(撮影:山内信也)

しかし、視野を広げると、トラブル半減といっても効果は大きい。2月4日付記事「『乗り入れ先』が原因で遅れる地下鉄はどこか」によれば、東京メトロ半蔵門線のダイヤ乱れの発生日数190日のうち、半蔵門線原因が31日。発生回数は田園都市線原因115回、東武スカイツリーライン52回、その他(自然災害など)原因が4回となっている。

つまり、田園都市線―半蔵門線―スカイツリーラインと連なる長大路線のダイヤ乱れの約60%は田園都市線が原因。ということは、田園都市線の輸送トラブルが減少すれば、半蔵門線とスカイツリーラインのダイヤ乱れも劇的に減少するわけだ。

2月8日、東急は4月1日付の新社長人事を発表した。髙橋和夫新社長にはぜひとも「田園都市線の遅延ゼロ実現」を目指してほしい。電車遅延で社会が被る不利益が解消されれば、日本経済の成長にも資するはずだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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