ヨーロッパ人とインド人は、同じ民族なのか 意外と知らない「民族のルーツ」

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ヨーロッパ方面に入ったインド・ヨーロッパ語族はギリシャ・イタリアなど地中海沿岸を中心に定住し、ヨーロッパ世界を形成します。インド地域に入ったインド・ヨーロッパ語族は現地のアジア系統の民族と混血し、暑い気候によって、肌の色が黒くなり、長い歴史の中で、われわれがイメージするようなインド人となります。

・サンスクリット語との類似

このように、ヨーロッパ人とインド人が元々、同族であるとする考え方を最初に主張したのはイギリスの言語学者ウィリアム・ジョーンズ(1746~1794年)でした。

ジョーンズが1780年代、インドへ調査に赴いたとき、古代インドのサンスクリット語を研究します。ジョーンズは、サンスクリット語がヨーロッパの諸言語と類似していることを発見します。

たとえば、英語のmotherはラテン語・ギリシャ語でmater、サンスクリット語でmatarです。英語のnewはラテン語でnovus、ギリシャ語でneos、サンスクリット語でnavaです。

ジョーンズは両者の語彙や文法の類似点を発見し、それらは単なる偶然ではなく、古代インド人とヨーロッパ人が同体系の母語を有していた証拠であると主張しました。

しかし、この程度の類似性があるからと言って、「同体系の母語を有していた」とまで言い切れるかは大いに疑問です。言語は語彙や文法において、何百万・何千万という形やパターンがあるもので、その膨大な情報量のなかで、100や200、あるいは1000や2000程度の共通点があったとしても、不思議なことではありません。

古代より、世界はわれわれが想像する以上に、交易によってつながっており、相互に言葉が輸入借用された可能性も大いにあります。

ノアの方舟伝説

・人類の始祖

それにもかかわらず、ジョーンズの説は当時の18世紀ヨーロッパにおいて、広く浸透し、人類学の定説となり、「インド・ヨーロッパ語族」という分類が定着していきます。

「インド・ヨーロッパ語族」はコーカソイドという人類学上の分類区分で呼ばれることもあります。この呼び名はカスピ海と黒海に挟まれた地域コーカサス地方(カフカース地方)に由来します。なぜ、1つの地域名が人種区分の名になったのでしょうか。これにはキリスト教の世界観が関係しています。

『旧約聖書』の創世記に、ノアの方舟についての有名な記述があります。大洪水に際し、神の指示を受けたノアは舟をつくり、家族と動物の雌雄を連れて乗り込んだため、人類や動物は生き延びたとされます。このとき、ノアは方舟でコーカサス地方のアララト山にたどり着き、ノアの家族たちが現在の人類の始祖となったというのです。

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