44歳で「発達障害」診断された主婦の苦悩人生 買い物依存も症状の一つ、大人は支援がない

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発達障害自体が知られていなかった20年ほど前までは、二次障害のうつで苦しみ、オーバードース(過量服薬)で3日間昏睡状態に陥ったこともあった。また、倉田さんの右手首には過去のリストカットによる白い線が何十本も走っていた。

「私のように40歳を過ぎてから診断が下りた人間って何も支援がないんです。子どものうちに気づいていれば、今は子ども向けの支援施設もありますが、ここまで育ってしまった大人には何もありません。だから、病院に行けば薬は出ますが、自分で何とかしないといけない状態。大人のための支援については、もう少し行政に頑張ってもらいたいです。

生活保護の話につながりますが、支援が必要な人ほど支援が届かない。私はここまで元気になれたから、自分では料理ができないことがわかってヘルパーさんに頼むことができています。本当にどうしようもないときは、ただ精神科の薬を飲むことだけしかできません」(倉田さん)

みんな少しずつ違う

最後に、発達障害に関する誤った情報も飛び交う世間に対する思いを聞いた。

「別に、発達障害の個別の症状について詳しく知ってもらわなくてもかまいません。ただ、精神障害者もいれば知的障害者、身体障害者、難病指定の病気の人もいる。偏差値50の人間なんていなくて、みんな少しずつ違うということが認められる社会になってほしいです」(倉田さん)

40代になるまで、なぜ自分が衝動的な言動をとってしまうのか、なぜ普通の人と違って良好な対人関係がつくれないのか、なぜ仕事ができないのかわからずに悩み続けた彼女。しかし、今は理解のある旦那さんに支えられながら、困った症状には工夫と対策をこらしている。今後はこれらの症状と客観的に付き合っていけるのではないかと思った。

倉田さん手作りのビーズのピアス(筆者撮影)

話しやすく親しみのある中年女性という印象が強かった倉田さん。事前に筆者のTwitterから、アクセサリーが好きだという情報を仕入れており、倉田さん手作りの美しいビーズのピアスをプレゼントしてくれた。耳につけると、透明なビーズがゆらゆらと揺れた。ビーズの向こうに透けて見えるのは、マイノリティな人がいてもいいと思われる世界であってほしい。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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