株安の裏側で渦巻く「債券バブル崩壊」の恐怖 もし起きたら日本は大きな影響を受ける

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不安になるのは、「100年に1度」と言われたリーマン・ショック級の株価暴落が再び襲うかもしれない、という恐怖だ。今回の株価暴落を、単なる一時的な調整局面とみていいのか。それとももっと構造的なものなのか。その部分をきちんと見極める必要があるだろう。

ただでさえ、ITやAI(人工知能)、ロボティクス、フィンテック、仮想通貨といった時代の大きな変革期に差し掛かっている現在、そうした時代の変革を株式市場は取り込みながら、大きく株価を上げてきた。そんな時代の変化に対して、株価が大きく調整すれば変革のスピードも減速することになる。

問題はなぜ金利が上昇してきたのかだ。ただでさえ景気がいいところに、トランプ政権が打ち出してきた経済政策は、大型減税やインフラ投資、軍事力増強といったインフレを招くような景気政策が並んだ。景気過熱=金利上昇圧力の高まりに投資家が警戒して利益確定を早めた、とみるのがいいだろう。しかし、そんな単純でわかりやすい説明だけで本当にいいのか……。そこに疑問が残る。

本質は「債券バブル崩壊」の前兆現象か?

今回の株価暴落の原因をもう一度整理してみよう。大きく挙げて3つある。

1. 長期金利の急騰……1月の米雇用統計の結果でもわかるように米国経済は好景気そのものだ。にもかかわらずトランプ政権が打ち出す大型減税やインフラ投資は、本来なら景気後退局面に打ち出す景気刺激策と言っていい。当然、インフレ懸念が出て金利が上昇。FRB理事の中には、2018年中にさらに3~4回の利上げが必要という発言も出てきた。

金利上昇は債券価格の下落を意味するものだが、株式市場にとってはマイナス材料で、その目安は3%と言われる。長期金利が3%を超えると、資金が株式市場からより安全性の高い債券市場に移動を開始するために、株式は売られやすくなる。現在、10年物米国国債の金利は2.857%(2月9日現在)。株式市場が金利上昇によって売られやすくなる水準まであと一歩というところだ。

2. 北朝鮮による地政学リスクの高まり……トランプ大統領が読めない政治家であり、しかも気まぐれであることから「米朝開戦」のリスクが依然として続いている。平昌五輪で、韓国と北朝鮮が融和ムードを演出しているものの、北朝鮮が米国に届く核ミサイル開発を続けていることは事実だ。「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」という投資格言があるが、米国本土にも届く核ミサイルや潜水艦から発射されるミサイルの開発によって、北朝鮮リスクは米国市場にとって「近くの戦争」になってしまった。

3. 過剰流動性を招いた「緩和マネー」バブル……リーマン・ショック以降、各国の中央銀行は競ってゼロ金利、マイナス金利、量的緩和策を実行してきた。ここにきて米国が金利を引き上げ始め、欧州のECB(欧州中央銀行)やBOE(イングランド銀行)なども、量的緩和の縮小や金利引き上げの金融政策に転換を始めている。

「現在の金融緩和策を継続する」と言いながらも、実質的にはテーパリング(量的緩和の縮小)をこっそりやり始めている日本のような国もあるが、いずれにしても世界中にバラまかれた緩和マネーが縮小の方向に向かっている、と言っていい。

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