両備・岡電「赤字バス4割廃止」届け出の真意 ドル箱路線に競争相手が低価格で攻勢

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岡山市内循環バスとして走っている「めぐりん」(筆者撮影)

通常、このような場合は影響を受ける事業者や、沿線自治体とその住民が議論の場を設け、認可された場合の影響範囲について確認・検討を行う。その議論の結果は認可に影響を与える。だが、今回の件ではそのような場は一切設けられていないという。

そこで、両備バスと岡電バスでは、認可された場合の影響を試算し、主要路線が打撃を被る中で健全経営を続けるためには輸送密度が低い路線を廃止せざるをえないとして、約40%もの路線廃止を届け出たのだ。

それにもかかわらず、記者会見を行った当日の17時30分に、中国運輸局は「めぐりん」の益野線を認可したのだった。

これに対して小嶋CEOは、次のコメントを発表した。「緊急の記者会見で問題提起をし、国や自治体や市民、交通事業者が、ともに考えなければならない大事な問題では、と問いかけたが、なにゆえ認可を急がれたのか、その真意がわからない」

「廃止」で訴えたい内容は何か

今回、路線廃止の届け出という、路線バス事業者としては最終手段に出た両備グループだが、その主張の要点は2つある。

1.衰退市場である地方に適した法整備が必要
2.認可に際しては、関係者の議論の場を設けるべき

1.については、2002年の道路運送法改正が成長市場である首都圏を対象としたもので、競争原理が前提となっている点を指摘している。衰退市場である地方に競争原理を持ち込むと、今回のように末端部のサービスを維持できなくなることは容易に想像がつくであろう。

例えば、今回の両備グループ2社の場合、いずれも健全経営をしているにもかかわらず、両備バスは30%の黒字路線で70%の赤字路線を維持している構図だ。岡電バスでも、40%の黒字路線で60%の赤字路線を維持している。しかも、両備バスは毎年3~5%の乗客数減に直面しているという。市街地を中心とするため、より良好な利用状況の岡電バスは、10年前に比べてやや乗客が増えているというが、その増加分は新設路線によるものや、市内での学会やイベントによる利用増であり、一般利用者は減少傾向にあるという。

岡山という人口70万都市、隣接する倉敷市を加えると約120万人の地方中核都市ですらこの状態だ。より規模の小さな都市圏の公共交通の維持はさらに大変であることが想像できる。地方創生といいながらも、実は東京一極集中を前提とした法整備がされていることが、はたして日本の将来の公共交通にとって、本当に良いことなのだろうかという疑問がある。

2.については、岡山以外では実施されているという。なぜ岡山で行われないのか、行わなくても問題がないとの判断がされてよいものか、筆者も疑問に感じる。

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