田園都市線「トラブルゼロ」への長い道のり 地下区間の点検方法見直し「メトロ並み」に

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「軌陸車」を使ったき電ケーブルや架線の点検作業(撮影:尾形文繁)

この日点検したのは高圧配電ケーブルのほか、電車に電力を供給する架線に送電するための「き電ケーブル」と、信号システムの制御などに使われる「信号ケーブル」など。き電ケーブルはトンネルの天井付近に設置されているため、点検には高所作業のできる車両「軌陸車」を使用する。信号ケーブルはトンネル側壁のやや高い所にあり、こちらは脚立を使っての作業だ。

これらのケーブルも従来は目視での確認だったが、今回の点検では高圧配電ケーブルと同様、手で触ることで傷の有無を確認した。信号ケーブルの点検を行っていた担当者は「手で触ると、傷がある部分はひっかかりがあるのですぐにわかります」と話す。触手点検の効果は高いようだ。

点検の頻度と方法を見直し

昨年10月と11月に相次いで発生した停電トラブルは、どちらもケーブルの損傷が原因だった。10月に三軒茶屋駅で発生した停電は、高圧配電ケーブルのショートが原因。2007年にケーブルを張り替えた際、従来よりもややケーブルが太くなったことで、トラフ内にあるネズミの侵入を防ぐ「防鼠板」が表面に食い込んで傷がつき、劣化してショートに至ったとみられている。

11月に池尻大橋駅で発生した停電は、き電ケーブルのショートによるものだった。こちらは2009年に敷設した際の施工不良によって表面に傷がつき、時間の経過や電車の振動などで傷が拡大したことが原因と推測されている。どちらのケーブルも、施工後に「竣工検査」を行い、さらに定期的な点検も行っていたものの、傷は見逃されていた。

ホーム下で行われた高圧配電ケーブルの点検作業(撮影:尾形文繁)

東急はこれらのトラブルを受け、11月の停電発生直後から約1カ月間にわたり、渋谷―二子玉川間の地下区間で約2000人を動員して「緊急安全総点検」を実施。その結果、緊急性はないものの各種のケーブル類に計281カ所の傷が見つかり、同社では設備の点検方法や頻度の見直しを行うこととした。今回公開された、ケーブルを手で触っての「触手点検」はこの見直しを踏まえたやり方だ。

これまで東急では、き電ケーブル・高圧配電ケーブルについては目視による「巡回点検」を2年に1回、目視と電気的な絶縁測定を行う「精密点検」を5年に1回行い、信号ケーブルについては1年に1回の目視点検のみだった。今後、田園都市線の地下区間ではこれに触手点検を加えるとともに、き電ケーブル・高圧配電ケーブルの精密点検については2年に1回とし、従来の倍以上の頻度とする方針だ。

だが実は、田園都市線地下区間の新たな点検方法や頻度は、同線が直通運転する半蔵門線など東京メトロのやり方に近い。

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