陸自の攻撃ヘリ部隊は、すでに瓦解している 墜落事故を機に長年の課題に向き合うべきだ

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陸幕の担当者とスバルは、2006年に単年度で10機ほどをまとめて調達しようと画策したが、当時は装備の「まとめ買い」というシステムがなく(注:2007年からは可能になっている)、単年度の調達だと予算が膨大となり、また中期防衛力整備計画で定められた機数を超えるので実現できなかった。そこで陸幕と防衛省は、性急に調達中止を決定したというのが真相のようだ。

実際に調達打ち切りが決定されたのは合計10機が調達された2007年だ。先述のように皮肉にも、この年から防衛省の装備のまとめ買いが始まっている。当時は当初かかった生産設備などの初期費用などを機体に按分していたために、わずか10機で調達を打ち切られると、スバルは初期投資費用を回収できなくなった。

だが、陸自は62機調達する契約はしていないとして、2007年にその費用を払うことを拒否し、調達中止を宣言したのだ。恐ろしいことにライフ・サイクル・コストが2000億円を超えるプロジェクトで契約が結ばれずに、口約束で調達が開始されるのだ。このため2010年、スバルは初度費用などを求めて訴訟を起こすこととなった(過去記事「富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明」参照)。

この訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定した。

たった13機では部隊としての運用ができない

訴訟と並行して防衛省は2011年度から2013年度までに毎年1機ずつ予算計上して3機の追加発注を行い、合計13機の調達を行ったところで、AH-64Dの調達は終了した。この一件によって防衛省は2008年から装備調達の初期に、「初度費」という費用を別途払う制度を導入している。だが、調達方式の抜本的な見直しを行ったわけではない。

実は2010年から米軍のアフガンの戦闘などでの損耗機体の補充などの理由もあって、新規の胴体の製造が再開されたが、陸幕はすでにアパッチ調達は終わった計画だとして、決定した13機以降の調達の再開は行われなかった。

だが、たった13機では訓練や整備、人事のローテーションを考慮すれば、実際に常に稼働できるのは5~6機程度しかない。これでは部隊としての運用は困難だ。しかも整備予算を十分に確保できず、飛行可能な機体であっても射撃ができない機体もあるという。こんな状態では、事実上、攻撃ヘリ部隊して戦力化されたとは言いがたい。

通常軍隊では部隊の3割が撃破されると組織的な活動が不可能となり「全滅」と判断される。この伝でいくと、射撃のできない機体もある陸自のAH-64D部隊は、戦う前からして「全滅」しているともいえるだろう。

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