川崎-熊谷を縦断!JR唯一「石炭列車」の全貌 石炭を鉄道でセメント工場に運ぶ深いワケ
昭和の石炭貨車は、貨車に山盛りに石炭を積んでいた。今はそうしないので昔を知る者として違和感がある。石炭積載車と空の回送(返空)貨車と見た目の区別がつかないのがやや残念だ。
工場内に広々としたプラスチックゴミの集積場や廃タイヤ置き場があるのにも驚いた。「クリンカ焼成工程では石炭を主に使っていますが、補助的にこうしたリサイクル資源も燃やして使います。石炭の方が温度管理しやすいんですが、なるべくリサイクル品の使用割合を多くするように努めているんです」(同前)。
石炭はセメントの原料にも
また前述の原料のうち天然の粘土は使用しておらず、粘土の代わりに石炭灰や埼玉県内の都市ゴミ焼却灰、下水処理場の汚泥などを使用している。都市ゴミ焼却灰は鉄道貨車で運んでいたこともあった。粘土と石炭灰、焼却灰などは見た目は似ていないが、代替品として使えるのだという。
すなわち石炭を通常使うように「燃料」としてだけでなく、灰となってからもそれをセメントの「原料」としても使っているわけである。
国内鉄道での石炭列車は上記だけだが、三重県を走る私鉄・三岐鉄道では、沿線にある太平洋セメント藤原工場へ、石炭灰を輸送している。これは中部電力碧南火力発電所(石炭火力)で発生した石炭灰を、原料の粘土の代替品として使うためのものである。
石炭列車の着くこちらの同熊谷工場では、石炭灰を自給自足できていて、石炭灰を持ち込む手間はかからない。
ともあれ鉄道遺産的な石炭列車で運ばれた石炭は、燃やすだけでなく、現在の産業活動で重要となった資源のリサイクルとしても活用されているのだった。
・上記時刻は、『貨物列車時刻表』公益社団法人鉄道貨物協会 2017年3月発行より。時刻は変更される場合もある。
・上記列車は日曜・祝日運休。ほかにも運休日があり月20本ほど運行。
・年2回(3月と9月など)、3週間からひと月、工場設備の点検期間は石炭列車も運休する。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら