海運市況が急上昇 中国需要は本物か 光が差した鉄鉱石船市況だが、持続性に疑問符も

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こうした流れに拍車をかけたのが、豪州と並ぶ鉄鉱石輸出国であるブラジルの動きだ。例年より雨季が長引いた結果、資源メジャーの一角、ヴァーレの月産量は春先まで2000万トン台前半と低迷していた。だが8月に入るとフル生産を開始し、月産3000万トン台を回復した。鉄鉱石の生産は雨季に入る12月までが勝負時。ヴァーレは今年の会社計画である3.3億~3.6億トンの生産量を達成すべく、10~11月に大車輪で仕上げにかかるもようだ。

ブラジル積み中国向けの1航海(往復で80日)は、豪州積み中国向け(同35日)の約2.3航海に相当し、船の必要量もそれだけ増える。ブラジルからの供給量急増は海運市況急騰の起爆剤となった。

鉄も船も供給過剰感

ただ、先行きは不透明だ。中国では中小の鉄鋼メーカーが乱立し、生き残りを懸けた増産競争を続けている。「実需と照らし合わせれば、今の鉄鋼生産量は過剰」(アナリスト)との指摘も多い。鉄鉱石輸入の伸びはいつ鈍化してもおかしくない。

ケープ船の世界的な供給過剰も解消していない。今年のケープ船の竣工は約110隻と昨年から半減する見通しだが鉄鉱石の輸出入量に対しては過剰感が残る。船舶数が適正水準になるのは、竣工がさらに減り解撤も進む1~2年後となりそうだ。

ブラジルが雨季に入る年末以降に海運市況が下落に転じるのが、ここ数年の傾向でもある。ケープ船の供給余力から見ると、足元の海運市況は明らかに割高水準であり、早晩反落に向かってもおかしくない。

海運会社の中には、今後の下振れリスクを見て現在の用船料で長期契約を結ぼうとする動きも複数ある。ただし、実際のところは長期契約が大半を占め、足元の好条件で結べる契約はごくわずか。市況好転がつかの間で終われば、恩恵を存分に享受できる会社はなさそうだ。

週刊東洋経済2013年10月1日号

前野 裕香 ライター

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まえの ゆか / Yuka Maeno

1984年生まれ。2008年に東洋経済新報社に入社し記者・編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業に移り、広報やコンテンツ制作に従事。現在はフリーランスライターとしても活動中。

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