汚染水対策に国費投入でも険しい東電再建 財務負担軽減も、経営安定化への道のりは遠い

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これに対し東電は、廃炉費用の資金枠について、これまで引き当てた約9600億円とは別に、コスト削減や投資抑制を通じ、今年度から10年間で1兆円を捻出する意向を表明。汚染水処理は、多核種除去装置(アルプス)の増強も含め、2014年度中に浄化完了を目指す。5、6号機の廃炉についても、今年末までに判断することを約束した。

3つの要請の実現の公算は?

これらは本当に実現されるのか。廃炉費用の捻出と5、6号機の廃炉は実現の公算が大きい。東電の背中を押すのが、10月にも省令改正で実施される廃炉会計制度の見直しだ。

現行制度では、設備減損や解体引当金不足額などの廃炉費用は、運転終了時に特別損失で一括計上する必要があり、電気料金の原価算入は認められていない。経産省は、原子力規制の大幅強化で想定外の早期廃炉が見込まれる中、電力会社の財務基盤が毀損し、円滑な廃炉に支障が生じるおそれがあるとして、運転終了後も設備の資産計上を認めて減価償却を継続させ、解体引当金計上も続ける制度に改める。福島第一のような事故炉についても、廃炉のために新たに取得する設備の資産計上と多年度にわたる減価償却が認められる。減価償却費は料金原価に算入されるのがミソだ。

東電はこれまでの廃炉費用については特損処理したため、財務体質が一気に悪化し、公的資本を仰いだ。追加の廃炉費用については、特損ではなく設備投資の一環として支出され、その減価償却費は電気料金で回収される。東電は他の設備投資の抑制や経費の圧縮などで料金原価全体は上げない意向だが、それでも財務体質の急激な悪化は防げる見通しだ。

5、6号機についても、新制度導入後に廃炉を決定すれば、タービンなど一部を除く設備の資産計上と減価償却の継続が認められる。現行制度ならば設備と核燃料の減損や解体引当金不足額の一括処理で約2000億円の特損が出るが、新制度だと特損は半分以下で済む見通しだ。

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