汚染水対策に国費投入でも険しい東電再建 財務負担軽減も、経営安定化への道のりは遠い
柏崎の今期再稼働は困難
一方、14年度中に汚染水の浄化を完了する目標には大いに疑問符が付く。東電が考える前提としては、アルプス(処理能力日量750トン)が近日中に稼働し、国費で建設する第二アルプス(同500トン)、東電が増設する第三アルプス(同750トン)を合わせて日量2000トンの処理体制を早期に整え、さらに地下水バイパスの早期稼働により、原発建屋へ日量400トン流入する地下水を最大100トン減らす。
しかし、第二、第三アルプスの本格稼働までには1年前後かかる見通し。また、地下水バイパス計画については、すぐ山側にある貯蔵タンクから約300トンに及ぶ高濃度汚染水が漏出しており、バイパスの井戸からくみ上げて海に放出する地下水への影響が懸念されている。
こうした状況で、すでにタンク内に約30万トン貯蔵され、毎日増え続けている汚染水の処理を完了するのは至難の業だろう。アルプスで除去できないトリチウムが残る処理済み汚染水を含め、海洋放出について地元住民の理解も得られていない。
汚染水の抜本策としてやはり国費が投入される凍土方式による陸側遮水壁(14年度中をメドに運用開始)や、東電が設置している海側遮水壁(14年9月完成予定)などについても、実際の効果は不明だ。
東電の経営の先行きも視界不良が続く。技術的に困難な設備に限るとはいえ、汚染水対策に国費が投入され始め、廃炉会計見直しで財務負担が軽減することは東電にとって好材料。ただ同社が渇望しているのは、まず柏崎刈羽原発の早期再稼働を通じた経営安定化だ。25日には新潟県庁で泉田裕彦知事との2回目の会談を行い、6、7号機の再稼働申請に対する事前了解をあらためて要請。前回に比べ知事の対応は軟化したとはいえ、ベント設備の運用と周辺住民の避難計画との整合性など知事側の疑念は解けず、事前了解はいったん保留。翌日、申請が条件付きで了解されたが、今期中の再稼働は絶望的で、経常黒字化へ向け料金再値上げを申請する可能性はなお残る。
そして、東電が最も望んでいる東電支援の枠組みの抜本見直しも議論が進んでいない。現状では、廃炉・除染費用は一時的に国が立て替えるが、将来は東電が特別負担金(料金原価に算入不可)の形で返済していく必要がある。費用の10兆円突破が確実視される中、東電は自身の負担を一部肩代わりしてくれるよう国に求めているが、政府としても費用の全容が不明なことなどを理由に塩漬けのままだ。この問題は国民負担の膨大化につながるため、国会でも紛糾必至で、東電破綻処理論が再浮上する可能性も否定できない。
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