会社員から鉄道小説家に転身、「成功の鍵」は?

最初は小説よりも企画書のような文体だった

まずは熟練の編集者として、児童小説のしきたりを教える。「長いセンテンスを使わない」「セリフをわかりやすく」。それでも小説を書こうとすら思ったことのない素人だった豊田の文章は直らない。しかし内容はキラリと光り、今までの児童小説にはない新しさを感じる。どうにかして小説にしたい。そこで一計を案じた。「とにかくいろんな児童小説を写してみて」。

もともと企画屋になるための道筋の1つ。決して小説家になりたいわけではなかった豊田だが、いくら書いても小説にならないことがだんだん歯がゆくなってきた。そして、どんな原稿を見せても、決して「あきらめましょう」とは言わず、どうしたら小説になるか提案をし続けてくれる石川に報いたい。だから石川の提案に対してあらゆるアイデアを試してみた。

「豊田さんはもともと小説家志望ではなかったせいか、わたしの提案に反発することなくすべて素直に試してくれました」と石川は言う。最初の本は1年がかりでようやく完成した。それに1巻を出した後の文章への執念もすさまじかった。文章を鍛錬し続けて、3巻目ぐらいでようやく石川のダメ出しはなくなった。

本当の趣味はミリタリー

そう。小説家志望ではなかった。そこに『LIFE SHIFT』できた鍵があるのではないかと、豊田は思う。「もしダメ出しを受けていたのが広告やゲームのことだったら、素直に聞けなかったと思う。自分にだってキャリアがあるという自負から反発していたんじゃないかな。でも、小説という世界では自分は素人。こだわりをなくしてプロの言うことを全面的に聞いてみようと思えたからこそ、書き上げられた気がする」。

でも、小さな頃から鉄道好きというこだわりと自負はあったのでないか。こんな問いに対して、豊田は「ここだけの話なんだけど」と、笑いながら教えてくれた。「実は鉄道って2番目の趣味なんだ」。

豊田が1番の趣味として挙げたのはミリタリー。その趣味を生かして、一般向けに書かれた講談社ミステリの『警視庁鉄道捜査班』シリーズの主人公・只見をミリタリーファンにしたという。登場人物がミリタリーファンという程度なら、人物像をイキイキさせられる良いスパイスにはなる。でも「逆にミリタリーを軸にした小説は好きすぎて距離感が取れずに難しいですね」。

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