その授業後、私は、自分のオフィスに戻ろうとする教授をつかまえて、突撃インタビューした。教授と仲良くなったところで、合否に関係があるはずがない。ただ、せっかくボストンまで来たのだから、何か話を聞きたいと思ったのだ。
その教授は、忙しいにもかかわらず、生徒に対する思い(100人のクラスメイトの全員の顔、名前、経歴、そして発言内容を完璧に暗記している!)や、ハーバードではどんな学生が求められているか(社交的で、積極的で、世界を変える夢に一歩踏み出し始めている学生という)について話してくれた。
次にカフェテリアに向かい、談笑している学生に話しかけてみた。「今、キャンパスビジットしているのだが、どうやったら合格できるのか、詳しく教えてほしい」。見ず知らずのアジア人の突然の依頼に、多少当惑しながらも、快く話をしてくれた。「とことん差別化するべき。人と違った強みを持っていることをアピールしまくるといい」。
このときキャンパスで得た刺激については、出願エッセイに渾身の思いで書きつづた。人づてに聞いた話や、インターネット上の情報ではない、自分の目で見て耳で聞いた体験だ。学校への想いを、行間に滲ませることができたと思う。
ホテルで審査官を待ち伏せ
第1関門であるエッセイが通過した後、面接が行われた。最寄りの会場は上海だった。面接会場となる上海の某外資系ホテルに前日から泊まり、面接会場を下見しようとホテル内を散策した。そうしていると、フロントの係の人から、ホテル内のビジネスセンターの一室がハーバード名義で予約されていることを聞きつけた。近くを通りかかると、廊下に面したカーテンの隙間から入学審査官の顔がちらっと見えた。
翌朝、私はホテルの朝食レストランで張り込むことにした。しばらく待つと、昨日、カーテンの陰から見た覚えのある入学審査官が現れたので、思い切って話しかけてみた。当然のことながら、かなりけげんな顔をされたが、追い払われることはなかった。彼女は食事を取りながら、上海についてなど世間話に応じてくれた。
さらに、ほかの人からも情報を得ようと、面接の1時間前から面接会場の前で待機した。終わって出てきた人を捕まえては、談笑しながら面接の雰囲気をつかもうとした。そんなひとりと名刺交換をしている際に、例の入学審査官が迎えにやってきた。
「あなたは誰とでもすぐに友達になるのね」。彼女はほほえんでいた。面接後は、ホテルのフロントの係の人に頼んで、手書きのサンキューレターを届けてもらった。それから約1カ月後、まさかハーバードに合格できるとは思っていなかった私の元に、合格通知が届いた。そのとき、頭に浮かんだのは、あの審査官の笑顔だった。
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