「米国株は高すぎる」と言える「3つの理由」 「従来の壁を超え新次元に突入」は正しいか

拡大
縮小

(2)金利が低い
金利が低いから、投資収益を求めて株式に資金が流れ込んでいるというのであれば、PERは18倍を超えることが常態化してもよいのかもしれない。
しかし、長短金利ともまだ水準としては低いが、短期金利の引き上げは継続して行なわれており、長期についても2016年7月に1.3%台だった10年国債利回りも、今は2.65%近辺になっている。すなわち、長短金利とも緩やかながら上昇してきているため、それに反して予想PERが拡大し続けていることは説明できない。

(3)カネ余りである
中央銀行が大量に資金をばらまいているので、行き場がないお金が株式市場になだれ込み、企業収益とは関係なく株価が押し上がって、PERが過去より高くても良い、という仮説も可能だ。しかし米連銀は、昨年10月から債券の買い入れ額を縮小している。やはりそれに逆行してPERの拡大が常態化するのもおかしいと言える。

日本企業の決算は悪くないが発表後材料出尽くし感も

以上、3点から、やはり米国株の予想PERは高すぎるのであり、その調整が株価下落という形で生じて、つれて下落した米ドルが、日本株も巻き込んで下落させる、という展開を見込むべきだろう。ただし、今の米国の株価の割高さは、「よくわからないが、売ると怖いので買う、すると株価が上がる、だからまた買う」といった投資家の動きによって引き起こされている。だが、それが逆回転するきっかけは、事前にはわかりにくい。

それでも、述べたように、米10年国債利回りはじわじわと2.65%近辺にまで上昇しており、債券と株式の相対比較で、債券に資金が戻る可能性が強まりつつある。暫定予算切れによる政府機関の閉鎖が生じても、米国経済に深刻な影響を与えるわけではないが、22日以降、利食い売りのネタにされる懸念もある。

そうした懸念要因が少しずつ積み上がるなか、日本株も「遠すぎた橋」に届かないまま反落する恐れがある。これから徐々に佳境になる企業決算の内容自体は、そう悪くはないだろう。ただ、収益に対する期待先行で株価が上がった部分があるとすれば、決算発表が好材料出尽くしと解釈される恐れは残っている。

こうした諸要因を踏まえて、今週の日経平均株価は、2万3200~2万4000円を予想する。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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