中小企業向け融資にAI・ネット完結の新潮流 ネット銀行やノンバンクが銀行の間隙を突く

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かつて銀行も、決算書などをベースに中小企業を点数化し融資判断を行う「スコアリング融資」をこぞって採用した。だが中小企業ではそもそも決算書が正しい保証もない。スコアリング融資の活用を標榜して2005年に開業した新銀行東京が赤字に沈んだように、業界全体で多額の貸し倒れが発生した。

有力地銀も高い関心を示す

新しいオンライン融資では、銀行の入出金、会計仕訳など借り手が手を加えにくい日々の取引情報を軸にAIが審査する。クレジットエンジンが展開するサービスのように飲食店などの評価サイト情報を判断材料に加えるモデルもある。取り扱う情報の質・量の充実に加え、機械学習などモデルを構築する手法も進化した。

有力地方銀行の関心も高い。審査モデルのライセンス提供を目指すアルトアの提携先には、福岡銀行や横浜銀行など上位4行が名を連ねる。人口減少や低金利で地銀の経営環境が厳しさを増す中、審査業務を効率化して、その分コンサルや営業に人手を充てたいといった狙いもありそうだ。

それでも収益拡大への道のりは平坦ではない。定期収入のあるサラリーマン相手の消費者金融と比べると、中小企業は会社ごとの違いが大きい。モデル構築の難易度ははるかに高いとされており、審査能力の継続的な向上が不可欠だ。

住信SBIネット銀行が「モデルが洗練されてきて、より最適な金利が出せるようになってきた」と訴える一方、アルトアも「PDCAを早く回し、半年単位でモデルを世代交代させる」(岡本社長)。ビッグデータやAIを活用した「銀行融資の空白地帯」を狙う争いは、早くも熱を帯びている。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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