「くまのパディントン」英高速列車の愛称に

車両に名前を付けるのが英国流だった

一方、イギリスを含む欧州諸国では列車の愛称がどのような形で使われているのだろうか。たとえば、かつての「オリエントエクスプレス」のように、日本と同様、ある種の優等列車に愛称をつけたものがある。

ただ、欧州に高速列車が縦横に走り回っているいま、愛称を持つものは国を越えて走る一部の長距離客車列車など、少数となっている。

命名式に臨んだ作者の実娘、カレン・ジャンケル女史(右側、Photo by Patricia Brown)

では、今回命名された愛称「パディントンベアー」はどのような仕組みで使われるのだろうか。たとえば、ロンドン―カーディフ間を走る列車はすべて、日本の特急のように同じ愛称で呼ばれる……とイメージしたらそれは間違いだ。この名前は数ある新型高速車両の1編成のうち、先頭車両につけられたもので、列車の種別などを示すものとは異なる。

こうした「車両に名前をつける」という手法は、英国では史上最古のSLができたときからのいわば「伝統」でもある。古い時代のSLは「ロコモーション号」や「ロケット号」などと呼ばれている。現在命名される愛称は主に、その鉄道に貢献した人名が使われることが多く、なんと一部の通勤列車の編成にもそんな人名の愛称が刻まれた金属製のがっちりとした銘板が取り付けられていることがある。

アガサ・クリスティも候補に

GWRでは、昨年秋に営業運転を開始したIETの編成に対し、すでにいくつかの愛称をつけている。

最初につけられた愛称は“イザムバード・キングダム・ブルネル”だ。ブルネルはGWRの施設や車両を設計した技術者で、19世紀の土木工事の第一人者。現在でも同氏の偉業による建築物が数多く現役で使われている。同編成の最後部にはGWR初代技師長の“ダニエル・グーチ卿”の名が刻まれている。

IETには、現女王の名前“エリザベス2世”と記された編成もある。命名の際には、女王自ら車両に乗ってパディントン駅までお出まし。「IETの最初の乗客」にもなった。同編成の最後部には“ビクトリア女王"とも記されている。このように、IETの車両にはいずれも「ビッグネーム」が刻まれている。

GWRではこの先、順次営業運転に投入される車両への愛称について、候補の人名100の中から選ぶという。これらの名前はいずれもロンドンから西に延びるGWR沿線に縁がある人々のものだという。候補に含まれている有名人として、現地の新聞が真っ先にあげたのは推理小説作家のアガサ・クリスティだ。「オリエント急行の殺人」で知られるアガサはGWRの沿線であるイングランド西部・デボン州の出身である。

次ページ車両の各ドアにはパディントンのイラストが
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