そして、今年のグランプリの栄冠を勝ち取ったのは、千葉県の市川高等学校。テーマは「棚田の未来を守れ!」です。山の斜面に階段状に作られた棚田は、日本の原風景と言われ、水源確保や防災に貢献し、外国人観光客にも人気です。
しかし、近年、農家の高齢化や機械導入の難しさにより、耕作面積は半減、衰退が進んでいる状況。そこで、高校生たちはIoTを活用した自動運転の小型稲刈り機を開発し、省力化を進め、あわせて棚田でできた米のブランド化による販売促進をすることで、棚田農業の新たな発展を目指します。
小型稲刈り機はまだ試作段階ですが、稲を根元から刈るのでなく、穂先を切ることで機械の小型化を実現し、狭い棚田でも稼働する工夫をしています。また、棚田の米は風通しの良さ、昼夜の寒暖差、土壌や水の恵みを受け、美味しく、栄養価が高いと言われています。この点を強調しブランド米として販売して、その参加権を全国の棚田農家に提供しようというプランです。
そして、注目すべきはチームの行動力。千葉や佐渡の農家の話を聞くことからはじめ、機械開発にあたってはリコーの中央研究所を訪ねて、製品改良の手順やIoT化の実装技術を聞いています。そして、棚田米のブランド化についてはJALの地域活性化推進部等を訪問し、農法や食文化の重要性などのストーリー作りの指導を受けています。より多くの棚田米ファンをつくるためJAL機内食での棚田米の使用も提案中です。
受賞スピーチでリーダーの余田大輝君は語ります。
「この1年間、プランに改良を重ねて頑張ってきた甲斐がありました。保護者、先生、農家、企業の方々はじめたくさんの人たちに支えられてここまで来ることができました。本当にありがとうございました。ただ、グランプリを取ったからといって、ここで終わってしまっては何もしていないのと同じ。ここから起業も含め、社会に対して影響を与えていけるような活動を続けていきたいと思います」
準グランプリは「国産初のクラゲ予防クリーム」
そして、準グランプリになったのは、愛媛県の長浜高等学校。国産初となるクラゲ予防クリームのビジネスです。ディズニー映画『ファインディング・ニモ』で話題になったクマノミが毒性の強いイソギンチャクと共生できる仕組みに着目し、5年にわたって同校で研究してきた成果を実用化するもの。現状、クラゲ予防クリームは海外製のものしかなく、効能の立証も不確かと言われています。研究データの裏付けがある国産のクリームは初めてで、日焼け止め効果も持たせて海でのレジャーを楽しむ人に提供します。まずは、サーファーへの浸透を図り、東京オリンピックのサーフィン競技に参加する選手にも配りたいとのこと。そして、事業で上げた収益はかつて地元にあった水族館の復活にあてて、地域活性化への貢献を図ります。
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