乗り換え改札設置「下北沢駅」は不便になるか メトロ・都営の「壁」撤去の流れには逆行?

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小田急線と井の頭線の乗り換えだけでなく、これから下北沢駅は駅とその周辺が大きく変貌する。今年3月25日には、地上時代から待ち合わせの人などでにぎわった南口(正確には「仮南口」)が廃止される予定。2018年度中を予定している新駅舎の完成後、小田急線の駅出入口はすでに完成している「南西口」と、井の頭線との乗り換え口となる「中央口」、そして現在の駅東側、かつての線路跡付近に新設される駅前広場(交通広場)に面した「東口」の3カ所となる予定だ。

広場や接続する道路の整備を進める世田谷区によると、広場のスペースは現在の南口付近までつながった形となる計画で、南口が廃止されても駅南側への利便性は確保されそうだ。だが、同区によると広場を含む都市計画道路事業は2021年度いっぱいまでの予定で、広場の完成は2022年春となる見込み。駅周辺を含め、長く続いている各種の工事が完全に終わるまでにはまだしばらく時間がかかりそうだ。

減った客足は戻るか?

踏切跡から見た、地下化直後の小田急線下北沢駅地上ホーム跡(2013年4月、記者撮影)

「若者の街」や「演劇の街」などとして知られ、独特の雰囲気が人気を集める下北沢だが、駅の利用者数は小田急線地下化直後の2013年度に、同線・井の頭線とも前年度比で約8%減少。2016年度は小田急線が前年度比0.7%増の11万4922人、井の頭線が0.9%増の11万4452人で両線ともやや上昇傾向にあるものの、地下化以前の水準には達していない。

乗り換え客の減少とともに「駅周辺工事が長く続いていることで、立ち寄りづらいというイメージもあるのではないか」(地元商業関係者)との声もある。だが、地下化による「開かずの踏切」解消で、「南北の通行がしやすくなったのは大きなメリット」(地元住民の男性)。かつては線路によって分断されていた街の回遊性が向上したこともまた事実だろう。

新駅舎の完成、そして駅前広場の整備と大きな変化が続く下北沢駅とその周辺。若者をはじめ、多くの人をひきつけてきた街の魅力をこれからも維持し続けられるか、今後の再開発の進展が注目される。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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