健保組合で赤字が続出!! 高齢者医療制度が直撃

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健保組合で赤字が続出!! 高齢者医療制度が直撃

企業が運営する健康保険組合の厳しい実態が鮮明化している。「小康状態から一気に財政が悪くなってきた」。10日、2007年度の決算を発表した健康保険組合連合会の対馬忠明専務理事は現状をこう表現した。1518組合合計で07年度の経常収支は599億円の黒字。前期から約1800億円減った。

08年度はさらに厳しい。新しい高齢者医療制度の開始で、健保連は国への拠出(前期高齢者納付金、後期高齢者支援金)が大幅に増えるからだ。各組合の予算ベースから集計した08年度の経常収支見通しは約6300億円の赤字で、9割の組合が水面下に沈む公算だ。予算集計後、国が拠出費の調整をしたため健保の費用負担は軽減されるが、それでも赤字転落は避けられそうにない。

西濃運輸に続き京樽も 相次ぐ健保の解散

健保連の負担増加は前期高齢者(65~74歳)医療制度の導入によるところが大きい。同制度は、前期高齢者の保険加入率が全国平均並み(約12%)という前提で、各健保組合にも拠出を求める。健保連ではその加入率が2%強と低いため、平均値12%との差分を補う「前期高齢者納付金」が大きな負担になる。

影響が懸念される中、8月には加入者5万7000人の西濃運輸健保が解散し、中小企業の加入が中心の政府管掌健康保険組合(政管健保)に移管したことが判明した。親会社のセイノーホールディングスは「個別事情によるもの」と制度変更の影響に言及しない。だが、西濃健保の前期高齢者加入率は1・1%で、新制度に伴う08年度の拠出費用増加が予想された。同健保の保険料率8・1%の引き上げが避けられない中、保険料率が8・2%の政管健保へ駆け込んだとみられる。

9月に解散した京樽も新制度の影響を受けた事例といえる。健保の常務理事を務めた成田昌明人材開発部次長は「自助努力の範囲を超えていると判断した。政管健保へ移らざるをえなかった」と話す。1992年のピーク時に加入者は7000人を超えたが、97年の会社更生法申請による事業縮小に伴い加入者数は減少。近年の経常収支も平均で約3500万円の赤字だった。前期高齢者の加入率も1%と低く、「納付金」負担が増える影響で08年度の赤字拡大が予想された。その赤字分は積立金でも補えず、法定準備金に手をつける必要に迫られていた。収支改善のため保険料率改定を試算したが、法定上限の10%を上回ることが判明し断念。政管健保へ移管した。


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