大企業トップが「賃上げ」について語ったこと トヨタ社長「話し合いをしっかりする」
[東京 5日 ロイター] - 5日の経済人賀詞交換会などで今年の賃上げに言及した各社首脳の主なコメントは以下の通り。
<豊田章男・トヨタ自動車社長>
私が(賃上げを)するとかしないとかという話ではなく、話し合いをしっかりする。従業員の幸せを願っているのが会社で、従業員は会社の繁栄を願っている。その中で毎年、本当に話し合う。話し合いの内容をテレビ中継したいくらいだ。労使がオープンに話し合いができる環境を今年も作り上げることが私の役割だ。
うちの場合は多くの部品メーカー、二次、三次、零細企業も含めて支えられている。トヨタももちろんリード役はやるが、組合組織が守られていないようなセクターの賃上げ、サービス業を中心とした賃上げなどはどうなのか、という点もぜひ報道してほしい。そういうところ(の改善)が日本全体のデフレ解消には一番役立つ。
<鈴木俊宏・スズキ社長>
個々の企業が置かれている環境や条件、利益状況など総合的に判断してやらないと、間違ったことになる。うちだけ上げればいいのか。(自動車業界)全体が(賃上げに)ついて来られるかというところを見ないと、格差をどんどん助長することになるのではないか。(スズキとしては賃上げを)ある程度前向きに考えるが、バランスを考慮しないと格差を生むことになる。
<志藤昭彦・日本自動車部品工業会会長(ヨロズ会長)>
賃上げして経済の好循環を作っていかなければいけないという安倍政権の考え方は理解はできる。ただ、各企業が賃上げできるかどうかは別だ。業績の良い企業は賃上げをやっていくべきだとは思うが、良い企業もあれば、悪い企業もある。これからの成長戦略との兼ね合いもある。賃上げ自体は好循環には必要なことだが、バランスが大事だ。
<小林喜光・経済同友会代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)>
あくまで目安。もうかっていないところもある。もうかっているところはもっと上げてもいいのではないか。
<竹増貞信・ローソン社長>
(賃上げへの対応は)今いろいろ考えているところだ。もともと、今の給与水準が業績連動になっている。どういう形で社員に対して答えていくか。いろいろな働き方を用意することもひとつだし、子育てのサポートもひとつ、ダイバーシティー(組織の多様性)を進めることもひとつ。働き方の中で給与も検討している。
方針は今のところニュートラル。前向き、後ろ向きという結論がまだ出ていない。働き方改革を含めて検討していく。単純に給与だけを考えると、社員全員の期待に応えることにはならない。
<新浪剛史・サントリーホールディングス社長>
社員への分配は人件費だけでなく、人材投資を含めた数値をしっかりと見ていくべきだ。人生100年時代で、社員の教育・研修は大企業に責任がある。バブル以降、研修費は減らしている。企業として、合わせ技で上げていく事が必要。賃金の分配率はなかなか上がらないと思う。社員に対する投資はすべきだし、政府ももっと言うべき。そのための費用を残業代から出していく。
3%(の賃上げ)は目標としてしっかりと掲げていこうと思っているが、政府から言われたからではなくて、消費を良くするには、企業として賃金を上げていかなければならない。重要なのは、賃金は一部であるということ。人材投資をどうするかが一番の課題。付加価値を高める商品を作るには、人材がいなければならない。
<井阪隆一・セブン&アイホールディングス社長>
個人消費が上がるには、所得が上がって、可処分所得が消費に回ることが必要。それと同時に魅力ある商品で消費を喚起することも重要。3%というパーセンテージまでは約束できないが、企業業績が上がった分はしっかりと分配していきたいと思っている。賃上げはする。全てのステークホルダーにきちんと還元できなければ企業の成長は継続しないので、しっかりとやっていきたい。
<小路明善・アサヒグループホールディングス社長>
アサヒビールは3%、アサヒ飲料は3.4%の賃上げを予定している。しかも、これを継続的にやっていく。賞与などを含んだものだ。政府の要請があったからではない。経営者が社員に対して処遇をどうするか。経営者の考え方の結果として見てもらえればよい。政府の要請で賃上げを左右されることはない。
<東原敏昭・日立製作所社長>
全体として年俸が増えて、可処分所得が増えていくというパターンになっていけるのではないかと思う。工場中心だった以前のように労働時間が増えれば生産量も増えるという時代ではない。そのころはベアが大事だったかもしれないが、今はバリュー(価値)やサービスにどれだけ対価を払うかという時代になっており、それに対する貢献を評価して、全体の年収を増やしていく。そういう形に変わってきていると思う。業績に応じて考えていきたい。
まだ組合からも要求は来ていないが、よく議論しながら極力、可処分所得が増える方向で考えていきたい。可処分所得を上げていくということには賛成だ。最終的には個人消費が増えて、それで日本の経済成長になる。
<栗山年弘・アルプス電気社長>
17年までは3%以上賃上げしている。今年はまだ分からないが、一応世間相場は意識している。加えて、業績連動の賞与はここのところずっと良いので、これが続けばさらにそれ(賞与)も上乗せされる。
<村田恒夫・村田製作所社長>
賃上げは業界全体として考えることでもあるので、足並みをそろえていきたいと思っている。日本で人材を確保するのはなかなか難しくなりつつあり、そのあたりは需要と供給をよく考えながら進めていくべきだと思っている。(基本的には前向きかとの質問に)そうだ。数字が一人歩きするのは良くないと思うので、業界ごとに考えていけばいいことだ。
<大西賢・日本航空会長>
賃上げというのは良い人材に来ていただくためのひとつの要素でしかなく、それ以外にたとえば働き方の柔軟性であったり、ダイバーシティーであったり、プロモーションであったり、いろいろな要素がある。必ずしも賃上げだけにこだわるつもりはない。
<進藤孝生・日本鉄鋼連盟会長(新日鉄住金社長)>
マクロ経済運営の観点から、政府が3%の賃上げが必要だと打ち出していることは十分理解している。ただ、今後どういうスタンスでいくかは、組合の要請が出てから考える。上げやすいから上げるというものでもない。これからの交渉だ。個別の労使が、企業で言えば支払い能力、組合から言えば自分たちの生活を守るという観点で、生産性向上も考えながら交渉する。ボーナスは業績連動になっており、去年よりは良くなる。
(ロイター日本語ニュース)
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