韓国独占「有機EL」、国産化阻む高いハードル JOLEDは「印刷方式」で量産を始められるのか
中でも出資に前のめりなのが、テレビのパネルと最終製品の両方を生産するシャープだ。同社の戴正呉社長は、かねて有機ELで「“日の丸連合”を結成すべし」との考えを表明している。2017年12月の記者会見で、戴社長はJOLEDへの出資の意向を問われると、「(日本に有機EL生産の)技術を残したいのかどうか、まずは経済産業省と産業革新機構に相談して、国のポリシーを聞きたい。それからシャープが判断する」と意欲を見せた。
同社も1992年から有機ELの研究開発を行っており、2018年4月にスマホ用小型パネルの出荷を始める予定だ。競合のLGやサムスンSDIを牽制する意味でも、大型パネルの量産技術を持つJOLEDと手を組むメリットはありそうだ。
一方、ほかの完成品メーカーは慎重な姿勢を示す。JOLEDの母体であるパナソニックとソニーは、共にテレビやスマホの不振を元凶とする経営危機に陥り、事業のリストラを進めてきた。現在はB to C向けのパネル生産から手を引き、大規模な投資を抑えることで採算改善に努めている。
ソニー、パナソニックは消極的
JOLEDへの出資に対しても、「報道などで名前が出て、正直驚いている」(パナソニック)、「ハイエンドな消費者を狙って有機ELテレビを展開してはいるが、テレビ事業は現状維持が目標で、チャレンジをする領域ではない」(ソニー)とつれない。両社が出資企業に名を連ねることはあれ、今更テレビ向けパネルの工場を造るために大枚をはたくとは考えにくい。
東芝に至っては、テレビ事業子会社を中国電機大手の海信集団(ハイセンスグループ)に売却するとすでに発表しており、新体制下で有機ELテレビがどのような位置づけになるかすら不透明だ。JOLEDとしては、店頭に並ぶ商品ブランドを持つメーカーと手を組むことが欠かせないが、こと同社が本領を発揮できるテレビ向けにおいては、多くの国内電機メーカーにその余力がないのが現状なのだ。
田窪CTOは、「印刷方式を有機EL生産技術のデファクト(事実上の標準)にしたい。まずは中型パネルの市場を開拓し、実績を積むことで世間からわれわれの技術が認められれば、いずれ大型パネルの技術提供もできるようになるだろう」と今後の展望を語る。だが、前途洋々とはいえない。
韓国勢が君臨する有機EL市場へと飛び込んだJOLED。はたして、対抗馬になるほどの存在感を示すことができるのか。有機ELテレビの国産化への道のりは長い。
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