韓国独占「有機EL」、国産化阻む高いハードル JOLEDは「印刷方式」で量産を始められるのか

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リベンジを図るJOLEDの強みは、パネルの生産方式にある。同社は韓国勢が採用する「蒸着方式」ではなく、「印刷方式」を採用している。印刷方式は母体のパナソニックが研究してきた技術で、インクジェットプリンタのように赤、緑、青の液体発光材料をガラス基板に塗り分けるというもの。真空環境で材料を気化させてガラスに付着させる蒸着方式と比べると設備が簡易なうえ、異なるパネルサイズでも同一の印刷ヘッドで対応できるというメリットがある。

同社CTO(最高技術責任者)の田窪米治代表取締役は、「従来よりも生産コストを2~3割抑えられるという試算もあり、その分をパネルの価格にも反映できるようになるだろう」と自信を見せる。

大型パネルでこそ「印刷方式」が強い

大型テレビに使われる有機ELパネルでは、JOLEDが採用した「印刷方式」が強みを発揮するという(撮影:梅谷秀司)

この印刷方式は、テレビ向けなどの大型パネル生産において本領を発揮する。ディスプレー業界に詳しいIHSマークイットの早瀬宏シニアディレクターは、「蒸着方式はパネルが大型化するにつれ、技術的な困難さが増す。LGは『白色蒸着方式』で大型パネルの生産に成功したが、発光効率が下がるというデメリットがある。こうした課題を克服できるのが、JOLEDの印刷方式だ」と指摘する。今後印刷方式による量産体制が整えば、生産効率は飛躍的に上がるとみられる。

が、本格的な量産のハードルは高い。最大の問題は資金不足だ。現在JOLEDは、グループのジャパンディスプレイ(JDI)の持つ石川工場の1フロアを借りて生産をしているが、今後量産体制へ移行するには巨額の設備投資が必要になり、相応のランニングコストもかかる。「仮にテレビ向けなどの大型パネル用ラインを一から導入しようとすれば、シャープの亀山工場にも匹敵する数千億円規模の投資が必要になる」(JOLED関係者)。現在経営再建中のJDIを、資金面で頼るのも難しい。

JOLEDの田窪米治CTO(最高技術責任者)は、資金集めに自信を示した(写真:JOLED)

そこで同社は現在、第三者割当増資による1000億円の資金調達を目指し奔走中。その3分の2を設備投資に充てる算段だ。

出資を打診したのは、製造装置、部品、パネル、完成品メーカーなどの複数社とみられ、「それなりに引き合いがある」(田窪CTO)。出資元には、国内のみならず海外企業も含まれているようだ。契約の最終合意は2018年3月末で、現在は交渉の大詰め段階という。

すでに報道で名前が挙がっている企業の中には、「契約の有無を話す段階ではないが、液晶から有機EL向けへの転換を進めているのは事実」(パネルの部材を供給する住友化学)、「韓国が先行する市場で、1社で対抗するのは難しい。複数社でやっていけるのならありがたい」(半導体製造装置を展開するSCREENホールディングス)と、有機EL向け事業の強化に意欲を示すところもある。

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